録画中継

第3回定例会
9月18日(水) 本会議(一般質問3日目)
市民連合
山下 隆夫 議員
1.空き家・空き地対策について
2.有機農業の推進について
【下関市議会 本会議速報版】
・下関市議会では、本会議の正式な会議録が作成されるまでの間、速報版を掲載いたします。
この速報版は、会期終了後約1か月程度で掲載します。
・速報版の会議録は校正前原稿であり、今後修正されることがあります。
なお、音声で認識できなかった部分は一時的に「★」で表示しています。
・校正後の会議録が「会議録検索システム」に掲載された時点で、速報版の会議録は校正後の会議録に差し替えます。

○副議長(安岡克昌君)
 17番、山下隆夫議員。(拍手)
  〔山下隆夫君登壇〕
○山下隆夫君
 市民連合の山下隆夫でございます。午前中、林真一郎議員より、空き家の管理、有効利用について質問がございました。私は、防災対策、空き家と空き地の一体管理の推進という観点から質問させていただきます。
 まず、少子高齢化の進展や人口移動の変化などを背景に、全国で空き家、空き地が増加の一途をたどり、中でも、適正な管理がなされず放置された空き家、空き地は防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼし、都市開発やインフラ整備の円滑な実施の支障になっているほか、災害時の復旧・復興の遅れにつながることが懸念されるなど、大きな社会問題になっています。
 本市におきましても、8月29日の深夜に入り、上田中町で空き家が全壊する被害が起こりました。周辺への大きな被害やけが人は確認されていないそうでありますけれども、傾斜地に民家が集積する住宅地であり、大きな災害に結びついた可能性も否定できません。現在、本市で確認をされている管理不全空家等及び特定空家等のそれぞれの件数をお伺いいたします。
○建設部長(伊南一也君)
 管理不全空家等として認定したものは、制度開始間もないこともありまして現時点ではゼロ件となっております。特定空家等として認定したものにつきましては、令和6年4月1日現在で57件でございまして、うち24件が解体され、33件が現存しております。
○山下隆夫君
 それでは、現在現存している特定空家のうち、倒壊をした場合に、周辺の住宅や住民に大きな被害をもたらすおそれがある特定空家、この件数は何件でしょうか。
○建設部長(伊南一也君)
 現存する特定空家等の33件のうち、15件は倒壊した場合に、周辺の住宅や住民に大きな被害をもたらすおそれがございます。残りの18件につきましては、倒壊したとしても、敷地外に大きな影響がないものや、既に家の一部が倒壊して廃材が残っているものなどで、これらは、即座に周辺に大きな被害を及ぼすおそれはないと考えております。
○山下隆夫君
 管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針――ガイドラインの中で「倒壊の恐れのある空家等が狭小な敷地の密集市街地に位置している場合や通行量の多い主要な道路の沿道に位置している場合等は、倒壊した場合に隣接する建築物や通行人等に被害が及びやすく、当該空家等に対する措置を講ずる必要性が高いと考えられる」とされております。
 本年8月8日には、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、気象庁は「いつ大規模地震が発生してもおかしくないことに留意し、日頃からの地震の備えについては、引き続き実施してください」と注意喚起をしています。
 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態の特定空家については、行政代執行等を視野に入れ、早急に対策を講じる必要があると考えますけれども、いかがお考えでしょうか。
○建設部長(伊南一也君)
 代執行につきましては、個人の財産に対して行うものでございまして、手続等に時間を大変要することや、公費を使って行うため、慎重な判断が必要と考えております。
 空き家は本来、所有者に管理していただくものでございますので、本市といたしましては、空家法による最終手段である代執行を行う前に解決できるよう、所有者に対して粘り強く指導してまいりたいと考えております。
○山下隆夫君
 今回、人命被害がなかったのでよかったのですが、人命被害が発生していたと考えたとき、悠長に構えていいのかという疑問が生じました。
 倒壊した場合、周辺の住宅や住民に大きな被害をもたらすおそれがある特定空家については、行政代執行等を視野に、早急に何らかの対策を講じることを改めて求めておきます。
 次に、空き地に関する苦情への対応を伺います。草木が繁茂するなど、周辺の生活環境に影響を及ぼしている空き地に関する苦情が市民から寄せられていると思いますけれども、直近3年間の苦情件数と対応状況及び対応する上での課題をお伺いします。
○環境部長(吉田 誠君)
 空き地の管理トラブルに関する対応件数は、令和3年度が56件、令和4年度が49件、令和5年度が64件となっております。
 対応の状況につきましては、まず職員が現地に赴いて状況を確認し、法務局で登記事項証明書を取得して、空き地所有者を調べた上で、草刈り等をお願いする文書を送付しております。その後も適正管理が行われず、継続して相談があった場合には、再度文書の送付を行っております。
 空き地の管理につきましては、人口の減少や高齢化の進展、都市部への人口移動等を背景に、土地の所有意識が薄れてきているという問題がございます。また、所有者等に対して適正管理のお願い文書を送付しておりますが、相続登記等がされずに、空き地の所有者を特定できず、所有者等に尋ね当たらないこともございます。
○山下隆夫君
 特定空家等に関しては、除却、修繕、立木の伐採等の措置の助言または指導、勧告、命令ができるようになっています。さらに、要件が明確化された行政代執行の方法により、強制執行を行うことも可能となっています。しかし、空き地に関しては、現行法では市区町村に指導権限がないことから、対応に苦慮されている実態があると思います。
 そうしたことから、これまで何度か一般質問等を通じて、空き地の適正管理条例の制定を求めてきました。環境部からは「本市の課題を整理した上、先進自治体の対応を調査・研究するとともに、本市の状況に適した対応について総合的に検討してまいります」との回答を頂いておりますけれども、調査・研究の状況、それを踏まえ、今後どのように施策展開していこうと考えているのか、お伺いいたします。
○環境部長(吉田 誠君)
 空き地の管理につきましては、原則、所有者の責任において実施いただくものであり、既に現行の下関市環境保全条例において、空き地の適正管理について所有者責任を規定して対応しております。本市における過去の事例を確認したところ、空き地所有者の8割近くが市内の方であり、市民に広く周知することが効果的かつ重要であることから、市ホームページ及び市報を活用して、所有者の責任について周知を行うことといたしました。
 また、国においては、所有者不明土地の発生予防として、不動産登記法の改正による相続登記の申請義務化や民法の改正による相隣関係の見直し、また相続土地国庫帰属法の成立により、相続等で取得した土地を国庫に帰属させることが可能となる制度が創設されております。
 有識者会議の議事録を見ますと、この相続土地国庫帰属制度は、当初予想以上に申請件数が伸びているそうですが、さらなる利用拡大に向け、要件見直しの意見も出始めており、引き続き、国が進めている様々な制度見直しの進展を注視してまいります。
○山下隆夫君
 これまでは、答弁や新年度予算要望への回答で「先進自治体の対応を調査・研究するとともに」というような回答を頂いているわけでありますけれども、今の答弁からすれば、調査・研究するという回答を出しているけれども、実際にはされていないということがよく理解できました。そういう回答をしたわけですから、その回答には責任を持って対応していただきたいと思います。
 神戸市では、立木伐採、防草シート施行を含む草刈協力事業者を登録し、統一した見積依頼書を市が作成し、登録事業者に申し込む制度を設けています。本市でもこういった制度を参考にして取り組んでみたらと思いますけれども、見解をお伺いいたします。
○環境部長(吉田 誠君)
 市が所有者等に対して発出する適正管理のお願い文書には、既に、草刈り事業者として市シルバー人材センター及び中高年事業団の連絡先を記載するなど紹介をしておりますが、今後、より利便性を向上させるため、草刈事業者の紹介方法については検討してまいります。
○山下隆夫君
 よろしくお願いします。次に、空き地の利活用についてお伺いをいたします。これも神戸市の事例ですが、空き地を農園として使ったり、ポケットパークとして提供するほか、雑草を生やさない対策をする場合に、整備費等を補助率2分の1で最大10万円を補助しています。
 また、狭い、再構築ができないなど単独では流通しにくい土地を、隣地と一体化して使う場合、売買に係る仲介手数料や所有者権移転登録費用、売却、合筆に必要な測量、明示登記費用を最大50万円補助する空き地応援制度を創設しています。この取組につきましても、検討すべき制度と考えますけれども、本市ではどのようにお考えか、見解をお伺いします。
○環境部長(吉田 誠君)
 議員が御紹介頂いた神戸市の「空き地活用応援制度」につきましては、空き地の維持管理にとどまらず、土地利用転換の促進や不動産の流動性の確保など、非常に多岐にわたっておりますので、関連する部局とともに、他市の事例を含めて調査・研究してまいります。
○山下隆夫君
 国土交通省は増加する空き地の荒廃を防ぐため、空家等対策特別措置法を参考に、管理が行き届かず、ごみの不法投棄など周辺環境に悪影響を及ぼすおそれがある場合、自治体が所有者に是正を勧告、命令できる権限を与えることを柱とする関連法案を来年の通常国会への提出を目指して、新制度を検討する方針を明らかにしています。
 国が法整備に動き出した背景の一つには、地域の実情に応じて独自の条例等を制定し、対策を講じている自治体の存在があるからであります。関連法は、空家等対策特別措置法を参考に整備することが明らかになっていますので、関連法の整備を待たずとも、これまでの調査・研究の成果を踏まえ、関連法の整備が行われた際、地域の実情に合った条例が直ちに制定できるよう準備しておいていただきたいと考えますけれども、見解をお伺いします。
○環境部長(吉田 誠君)
 議員がただいま御紹介されたものは、国土交通省の不動産・建設経済局が所管する「土地政策研究会」において検討されている空き地に対する新制度についてのものと思われますが、環境部においても、有識者会議の議事録を確認するなど、その動向を注視するとともに、関係する部局と協力しながら、総合的に検討してまいります。
○山下隆夫君
 事前に、準備しておくという答弁は頂けなかったわけでありますけれども、条例の検討に当たっては、住宅地におけるのり面の適正管理も含めて検討していただきたいと思います。空き地等については、それなりの取組をされていますけれども、住宅地ののり面に草木が繁茂した場合の対応というのは、なかなか取り組まれていないと思いますので、そういった苦情も聞いておりますので、ぜひ条例を検討する場合には、住宅地におけるのり面の適正管理も含めて、検討していっていただきたいと思います。
 次に、空き家、空き地の一体的、総合的な対策の推進について伺います。国の関係法令の整備及び対策、地方自治体の地域の実情に応じた条例の制定や法律に基づく対策を踏まえ、全国市議会議長会の令和5年度空き家、空き地問題に関する特別委員会は、本年2月、空き家、空き地問題に関する要望・提言をまとめ、国に対して要望するとともに、地方自治体に対し、所有者、市民の問題意識の醸成と意識啓発、空き家、空き地の一体的総合的取組の推進、相談体制の整備など7項目の提言をしています。以下、全国市議会議長会の提言を踏まえ、何点か質問をいたします。
 まず、所有者、市民の問題意識の醸成と意識啓発について伺います。全国市議会議長会は「空き家、空き地の発生を防止するためには、所有者の問題意識の醸成と意識啓発が不可欠である。そのため、市区町村においては、空き家・空き地問題についての情報発信、相続対策セミナーや住まいの終活に関するリーフレットの配布など問題意識の醸成と意識啓発に資する取組を積極的に行うことが必要である。併せて、空き家・空き地問題について、所有者のみならず多くの市民に関心を持ってもらうため、様々な媒体を通して情報発信していくことが必要である」と提言をしています。
 私も、空き家、空き地の発生を防止するためには、所有者の問題意識の醸成と意識啓発が不可欠だと思っています。これに関する本市の取組の現状、これをお伺いします。
○建設部長(伊南一也君)
 まず、建設部からお答えいたします。空き家所有者への意識啓発、情報発信の取組につきましては、空き家問題の解決や空き家の発生予防を目的とした説明会の開催、YouTube動画を通じた情報発信などに取り組んでいるところでございます。
○環境部長(吉田 誠君)
 続きまして、環境部での取組についてお答えいたします。議員の御指摘のとおり、所有者の適正管理の責任について、市民に広く周知することが効果的かつ重要であると思われますので、空き地所有者の8割近くが市内の方であることを踏まえ、適正管理の周知の方法として、昨年度から市のホームページに、さらなる取組として今年度から市報を活用して、空き地の適正管理について周知を行ってございます。
○山下隆夫君
 様々な取組をされているようでありますけれども、まだまだこれで十分かと言えば、十分な取組になっていないと思います。さらに、取組を強化していっていただきたいと思います。
 空き家、空き地の発生を防止するためには、市民に対して様々な媒体を通じて、各種情報や国、県、市の補助制度等を広く伝えることが私は重要だと思います。特に、樹木や雑草の繁茂などの対策は、共通している部分が多く、一体的・総合的に対応することが効率的であり、合理的だと思っています。
 全国市議会議長会は、空き家対策と空き地対策は密接に関係することから、両対策を一体的・総合的に取り組み、推進していくことが必要であると提言をしています。
 現状においては、縦割り行政の中で、空き家対策は建設部が、空き地対策は主に環境部が担っていると思います。国土交通省が空き地に関する法整備に動き出した要因の一つに、空き家対策が進み、住居撤去後の跡地が放置される事例が増えてきたこと。空き家、空き地の一体的・総合的取組を推進し、一定の成果を上げている地方自治体があるからであります。
 先ほど、空き地の適正管理に関し、草刈り事業者を登録し、事業をあっせんする制度の創設について、環境部に提言をいたしましたけれども、縦割り行政の中で別々に取り組むより、一体的、総合的に取り組んだほうが私は合理的だと思っています。
 全国市議会議長会が提言しているように、空き家対策と空き地対策は密接に関係しています。建設部と環境部が連携し、空き家、空き地問題に関して一体的・総合的に対策を講じるべきと私は考えますけれども、いかがお考えでしょうか。
○建設部長(伊南一也君)
 御指摘のとおり、空き家と空き地は密接に関係しておりますので、空き家が解体された後の空き地対策などについては、環境部と連携を図るということは重要だと考えております。
 一方で、空き家と空き地の一体的な対策を進めるに当たりましては、空き家施策を実施する過程において知り得た所有者情報を、空き地の施策に容易に活用できないなどの課題もございます。
 つきましては、空き地と空き家、それぞれの市民からの問合せ情報を建設部、環境部で共有するなど、まずは連携を図ることが可能なことから取り組んでいくことが重要と考えておりまして、現在、できることから協力して対応しているところでございます。
○山下隆夫君
 今の御答弁を具体的に実践するための方法としての提案をこれからさせていただきたいと思います。
 全国市議会議長会は「市区町村においては、空き家、空き地の所有者等からの相談に迅速に対応するため、窓口を一つにし、司法書士、税理士、建築士等の専門家による支援につなげられるワンストップサービス等の相談体制を整備することが必要である」と提言しています。
 本市の空き家、空き地問題に関する、取りあえず、相談窓口の現状はどのようになっているのかお伺いいたします。
○建設部長(伊南一也君)
 建設部のほうからは、空き家の窓口の状況についてお答えをいたします。空き家についての御相談は、法令等に基づきまして、住宅政策課におきまして、適切に対応しているところでございます。
○環境部長(吉田 誠君)
 空き地の適正管理の御相談につきましては、環境政策課において個別にお受けし、適切に対応しているところでございます。
○山下隆夫君
 これにつきましても、縦割り行政の中で、建設部、環境部がそれぞれ別に対応しているということでございました。市民サービスや業務の効率化などを考慮すると、窓口を一本化すべきだと私は思います。その上で、司法書士、税理士、建築士等の専門家による支援につなげられるワンストップサービスの相談体制を早急に整備することが必要だと思います。こういった、ワンストップサービスの相談体制を整備することについてのお考えをお伺いいたします。
○建設部長(伊南一也君)
 本市の状況でございますけれども、繰り返しになりますが、住宅政策課が空き家対策全般の総合窓口として、全般的な対応を行っているところでございます。空き家の相談につきましても、環境部と協力して対応しているところでございます。
 今後につきましては、空き地に対する新制度などの国の動向にも注視しながら、関係部局と連携して一体的、総合的な体制の構築を研究してまいります。
○山下隆夫君
 改めて申しておきますけれども、司法書士、税理士、建築士等の専門家による支援につなげられるワンストップサービスの相談体制を構築するよう改めて求めておきます。
 総務省の住宅・土地統計調査によれば、日常的に人が住んでいない空き家の数は、住宅全体の13.8%に当たる900万戸に上り、前回の調査からは51万戸増え、過去最大となり、30年前のおよそ2倍となっています。
 空き地の面積も同様に年々増大をしています。特に、適切に管理されていない空き家、空き地の増加が社会問題していることから、空き家や所有者不明の土地については、先ほど御答弁がありましたように、国において法整備が行われ、対策が講じられていますけれども、所有者が分かっている空き地については、対策が取り残されているのが現状であります。増加する空き地の荒廃を防ぐため、国土交通庁が検討している新制度を注視しながらも、全国市議会議長会が提言している内容について、前向きに検討していただきたいということを申しまして、この件についての質問を終わります。
 次に、有機農業の推進について伺います。平成18年に有機農業の推進に関する法律、いわゆる有機農業推進法が施行され、国は2050年までにオーガニック市場を拡大しつつ、耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%――100万ヘクタールに拡大をするとともに、化学農薬の使用量をリスク換算で50%低減することを目標にしています。これらの目標を達成するためには、国、地方自治体、生産者、消費者、研究者等が連携をして取り組むことが重要ということは、申すまでもありませんけれども、有機農業推進法において、地方公共団体には、どのような責務が課せられているのでしょうか、お伺いします。
○農林水産振興部長(三木正之君)
 地方公共団体の責務についてお答えいたします。
 有機農業の推進に関する法律第4条に、国及び地方公共団体の責務が規定されており、第1項において「国及び地方公共団体は、同法第3条に定める基本理念にのっとり、有機農業の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する」。第2項において「国及び地方公共団体は、農業者その他の関係者及び消費者の協力を得つつ有機農業を推進するものとする」とされております。
○山下隆夫君
 今、お示しいただきましたように、地方公共団体は、責任を持って有機農業を推進することと有機農業推進法で規定されているわけであります。その責務を果たすために、地方公共団体はどのような施策等に取り組むことが求められているのでしょうか、お伺いします。
○農林水産振興部長(三木正之君)
 責務を果たすための取組についてお答えいたします。
 「有機農業の推進に関する法律」で課せられている責務を果たすための取組については、同法の第8条から第13条及び第15条に規定されております。
 第8条に有機農業者等の支援、第9条に技術開発等の促進、第10条に消費者の理解と関心の増進、第11条に有機農業者と消費者の相互理解の増進、第12条に有機農業の推進に必要な調査の実施、第13条に国及び地方公共団体以外の者が行う有機農業の推進のための活動の支援、第15条に有機農業者等の意見の反映が規定され、それぞれにおいて必要な施策、措置を講ずることとされております。
○山下隆夫君
 地方公共団体に課せられている責任を果たすために取り組まなければならない施策等が、今、部長が答弁されましたように、有機農業推進法の第8条から第13条及び第15条で規定をされているわけであります。以下、それぞれの実施状況についてお伺いをいたします。
 まず第8条で「有機農業者及び有機農業を行おうとする者の支援のために必要な措置を講ずるものとすること」、また第13条で「国及び地方公共団体以外の者が行う有機農業の推進のための活動の支援に必要な措置を講ずるものとする」と有機農業者等への支援が規定をされていますけれども、本市では、これらについてどのように取り組まれているのでしょうか、お伺いします。
○農林水産振興部長(三木正之君)
 第8条及び第13条に規定する有機農業者等への支援に係る本市の取組についてお答えいたします。
 本市では、科学的に合成された肥料や農薬を使用しない等の有機農業に取り組む農業者に対し、国の制度である「環境保全型農業直接支払事業」を通じて支援を行っているところです。また、豊北地区で遊休農地等を大規模に集積、開墾して有機農業に取り組んでいる楽天農業株式会社に対し、単市事業である「遊休農地等再生対策モデル事業」と「新たな農業経営者等育成実践モデル事業」により、有害鳥獣防止柵の整備、農業機械の導入、事務所改修の支援、同社へ就業した移住就農者への家賃の支援等を行っております。
 同社は有機JAS認証を取得し、自社加工工場と販売ネットワークを保有して、大規模に露地野菜を生産されながら、農業経験を問わず、独立・自営就農希望者を新たに雇用し、インキュベーションファームとして未来の有機農業経営者の育成に寄与している企業です。
 本市とも、新規就農者の確保、育成に連携して取り組んでおりまして、今年度は、本市独自の新規事業である「農業体験チャレンジ事業」こちらにおいて7名の就農希望者が同社の有機農業の研修を受けております。今後も、国・県制度の活用や市独自の施策を通じて、有機農業者を含めた農業者への支援を行ってまいります。
○山下隆夫君
 次に、第9条で「有機農業に関する技術の研究開発及びその成果を普及を促進するため、研究施設の整備、研究開発の成果に関する普及指導及び情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする」こと、また、第12条で「有機農業の推進に関し必要な調査を実施するものとする」ことが規定をされていますけれども、本市の取組状況をお伺いします。
○農林水産振興部長(三木正之君)
 第9条及び第議第12条における本市の取組についてお答えいたします。
 まず、第9条についてですが、技術の研究開発に関しては、主には国や県レベルで行われるものであり、本市においては、県やJA等の関係機関と連携しながら「環境保全型農業直接支払事業」を通じて、有機農業者に対し、普及指導や情報の提供等を行っているところです。
 また第12条に規定されている調査につきましては、県外の有機農業の先進的な取組事例の視察等により、生産から商品化までの工程、有機農産物の現状など情報収集を行っております。
 今後も、県やJAと連携しながら、引き続き、普及指導や情報の提供に努めるとともに、有機農業の推進に関して必要な調査等を実施してまいりたいと考えております。
○山下隆夫君
 次に、第10条で「有機農業に関する知識の普及及び啓発のための広報活動その他の消費者の有機農業に対する理解と関心を深めるために必要な措置を講ずるものとする」こと、また第11条で「有機農業者と消費者の相互理解の増進のため、有機農業者と消費者との交流の促進その他の必要な措置を講ずるものとする」と、有機農業への理解を深めることなどの施策展開が求められていますけれども、これらに関する本市の取組の状況を伺います。
○農林水産振興部長(三木正之君)
 第10条及び第11条における取組状況についてお答えいたします。
 本市においては、令和3年度から、有機農業者を含めた農業者と消費者の交流の促進を目的としたフェイスブックグループやホームページを開設して、積極的に情報発信するとともに、有機農業者も出店したイベント「しもマルのマルシェ」を開催し、農業者と消費者の相互理解の増進に努めてきたところです。
 今後も、様々な機会を通して、有機農業に関する消費者への普及・啓発、農業者と消費者との交流や相互理解の増進に取り組んでまいりたいと考えております。
○山下隆夫君
 次に、第15条で「有機農業の推進に関する施策の策定に当たっては、有機農業者その他の関係者及び消費者に対する当該施策について意見を述べる機会の付与その他当該施策にこれらの者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする」ことが規定されていますけれども、これに関する本市の取組状況をお伺いします。
○農林水産振興部長(三木正之君)
 第15条の取組状況についてお答えいたします。
 本市は、農業法人や若手農業者等との意見交換会や市民団体、農業関係団体等からの要望を通じて、様々な方から御意見を頂きながら、施策立案を行っております。
 今後も、本市の農業振興においては、先ほど御紹介あった同法の趣旨も踏まえながら、多くの方々から御意見を頂き、必要な施策を講じてまいりたいと考えております。
○山下隆夫君
 今、有機農業推進法で規定をされている地方公共団体が取り組まなければいけない施策等の取組の現状をお伺いいたしました。感想としては、何らかの取組をやっているようには見えるけれども、具体的に取組がされていないのかなという感想を受けました。
 と言いますのは、令和6年度予算要望に関する市民連合の有機農業の推進に関する要望に関して、農林水産振興部は、このような回答しています。「有機農業は、農業の自然環境機能を大きく増進させ、環境負荷を大きく低減するものであるとともに、農産物の付加価値を高め、有利販売につなげることができるなどのメリットがあると認識をしておりますが、一方で、化学肥料や農薬を使用しないことにより、収量、品質が不安定であるなどの課題もあるため、これまで、本市での積極的な取組を行っていない状況です」と我が会派の要望に対しては、このように回答をしています。
 聞き取りの際にも、積極的な取組はできていないようなお話もありました。今、一般質問で質問されているので、何らかの取組を答弁しなければいけないと思って答弁されたと思いますけれども、本音は、この回答の中にあるのではないかと思います。
 先般、第3次総合計画の策定について、全協で議員の意見が出されました。その際にも、戸澤議員、田中議員から「総合計画の中に有機農業の推進というのが含まれていないのではないかと。どういうことなのか」という指摘がありました。なぜ入っていないかというと、認識はこういう認識がある。それと有機農業推進法で、有機農業の推進はもう義務として課せられているわけです。
 昨日、教科書問題で、法令どおりに取組ができていなかったことについて、市長が謝罪をされましたけれども、これはもう法律で、ちゃんとやりなさいと、もう責務ですよとその責任を果たすためにはこのような取組をしてくださいと規定されているわけですから、これはやって当然なのです。それがあまり本気に取り組まれていない。そこに私は大きな問題があると思っています。
 先ほど「今後このようにしていきたい」という答弁もありましたけれども、その答弁を踏まえ、さらに積極的に推進をしていく、そういう心構えで取り組んでいっていきたいと思います。
 法律で責任を持って有機農業を推進することが義務として規定されているにもかかわらず、主体的に取組が行われていないのは、有機農業を推進することによって得られる効果、期待についての認識がちょっと薄いのではないかなと思っています。
 そこで次に、有機農業の推進による期待される効果について少し議論をしていきたいと思います。なぜ有機農業が推進されているのかという点について、さらに、認識を深めておきたいと思います。
 「近年、有機農業が生物多様性保全や地球温暖化防止等に高い効果を示すことが明らかにされており、その取組拡大は、農業施策全体及び農村における国連の持続可能な開発目標SDGsの達成にも貢献するものである」と有機農業の推進に関する基本的な方針で示されていますように、食の安全・安心はもとより、地球温暖化防止や生物多様性、SDGsの達成に貢献することなど、有機農業は農業の自然循環機能を大きく増進し、農業生産に由来をする環境への負荷を低減することが期待をされています。その他、有機農業を推進することにより期待される効果、これについて本市ではどのように認識をされていますか、お伺いします。
○農林水産振興部長(三木正之君)
 有機農業を推進することにより期待される効果についてお答えいたします。
 先ほど議員からございました効果に加えまして、有機農業の取組に関心のある新規就農者の参入が期待されるなど、担い手の確保にもつながる可能性があると考えております。
 また、有機JAS規格の規格基準を満たす農地は、最初の収穫前の3年以上または播種、植付前の2年以上の間、化学肥料等が使用されていない有機的管理が必要であり、遊休農地等を活用して始めることが効率的であることから、遊休農地等の解消が期待されます。
 またさらに、生産された有機農産物が消費者に受け入れられ、付加価値の高い農産物として販売できれば、農業者の所得向上に寄与するものと考えられます。
○山下隆夫君
 有機農業推進法に基づき、有機農業に積極的に取り組んでいる先進自治体では、移住者の増加による新たな担い手の確保につながったという事例、また後継者不足から耕作放棄地を抱える既存農業者との連携により、農地の有効利用が図れたという事例、さらには、有機米がブランドとなり、全国平均で1俵が約1万6,000円の時代に1俵2万5,000円以上で販売できるようになった千葉県いすみ市の事例など、有機農業は大きな可能性を秘めています。
 そういう意味では、農業の担い手確保対策、耕作放棄地解消対策、農業所得の増大施策などの施策と連携をして政策展開を今後図っていくべきだと考えますけれども、見解を伺います。
○農林水産振興部長(三木正之君)
 事業展開についてお答えいたします。
 有機農業の推進については、議員からもお示しがありましたとおり、様々なメリットがあると認識しております。
 本市においては、有機農業に取り組む農業者への支援として、先ほど御説明いたしました「遊休農地等再生対策モデル事業」や「新たな農業経営者等育成実践モデル事業」の取組もあり、本市の有機農業面積は約30ヘクタールと広がりを見せてきているところです。
 しかしながら、その一方で、有機農業については、化学肥料や農薬を使用しないことにより、収量や品質が不安定であること、また栽培に労力がかかるといった課題もまだ多くあります。
 今後は、これらの課題解決に向け、生産コストの削減や安定生産に資する技術開発の動向を注視しながら、市として幅広い政策につなげていけるよう、関係部局と連携し、有機農業の取組についてさらに研究・検討してまいりたいと考えております。
○山下隆夫君
 しっかり研究・検討していただきたいと思います。
 今、部長が申されたデメリットの部分、先進自治体では、もうそれは過去の話と言われています。先進自治体の事例をしっかり調査・研究をして、法律で規定されているとおりの業務をこなしていただきたいと思います。
 最後に、有機農業推進計画の策定についてお伺いをいたします。有機農業推進法で規定されている地方公共団体の責務を果たすために講じなければならない施策等を計画的に着実に推進していくため、山口県内では宇部市、山口市、防府市、美祢市、長門市が有機農業推進計画を策定しています。
 山口県有機農業推進計画におきましても「有機農業推進法基本方針、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律等を踏まえ、国制度の活用促進や有機農業の取組の意識醸成を図るとともに、市町における有機農業推進計画の策定を促進します」と推進計画を策定することが推奨されています。
 本市におきましても、早急に推進計画を策定すべきと思いますけれども、見解をお伺いします。
○農林水産振興部長(三木正之君)
 「有機農業推進計画」の策定についてお答えいたします。
 農業振興を図るために目標を掲げ、効果的な振興策を計画的に講じていくことは重要なことであると認識しております。
 そうした中、農業振興につきましては、下関市、山口県下関農林事務所、JA山口県下関統括本部などの関係機関で構成する下関地域農林業・農山村振興協議会で「下関地域農林業振興計画」を令和5年5月に策定し、この計画の中で、有機農業に関する成果指標を掲げております。
 また、令和5年3月に山口県及び県内全19市町が共同で「山口県農林水産業環境負荷低減事業活動の促進に関する基本的な計画」こちらを策定し、本市としてもこの計画に基づき、環境負荷低減の取組として有機農業を推進しております。
 法にもございますように、有機農業の推進は、農業者その他関係者の自主性を尊重しつつ行わなければならないと規定されておりますので「有機農業推進計画」の策定に当たっては、有機農業のメリットとリスクも鑑みながら、取り組む農業者と消費者の理解を深めていくことが大切であると考えています。
 まずは「下関地域農林業振興計画」や「山口県農林水産業環境負荷低減事業活動の促進に関する基本的な計画」に掲げます有機農業の目標の達成に向けて、課題を整理し、本市の有機農業を推進しながら「有機農業推進計画」の策定については引き続き検討してまいりたいと考えております。
○山下隆夫君
 何度も繰り返しますけれども、地方公共団体には、有機農業を推進するための具体的な手段や対策を講じることが法律で義務づけられているわけであります。
 先ほど現状をお伺いいたしましたけれども、法律の規定に基づいて積極的に取り組まれているかと言えば、取り組まれている状況でもない。なぜか。やはりそれは、指針とするものを持っていないからだと私は思います。そういった意味では、これから積極的に推進していくためには、ちゃんとした指針を、柱を立てて取り組んでいかなければ、当然、生産者とか、JAさんとか、有機農業を実際に実施されている方々との意見交換をして、意識を、ベクトルを合わせていく作業というのは本当に必要だと思います。
 ただ、現状ではそのレベルではない。そのレベルに早く到達するためには、やはりこの推進計画をつくっていくべきだろうと思います。
 ちなみに、お隣の長門市におきましては、担い手の確保、有機栽培技術等に関する支援、動物の堆肥を利用した循環型農業の推進、既存農業者と他地区から参入される方との調和、販路拡大、理解の推進、これを五つの柱として推進計画を策定し、取り組んでいます。直ちに推進計画の策定に取り組むべきだと思います。改めて、見解をお伺いいたします。
○農林水産振興部長(三木正之君)
 法第3条第4項に「有機農業の推進は、農業者その他の関係者の自主性を尊重しつつ行わなければならない」とございます。有機農業はメリットもある一方で、収量や品質が不安定なことや労力がかかるというような課題もございます。行政が一定の支援を行うということがあったとしても、そうしたリスクや労力を直接的に背負う、農業者、生産者の理解が不可欠になってまいります。
 国が掲げるみどりの食料システム戦略の目標値、2050年までに有機農業の取組25%、こちらに向けて有機農業を推進していくという大きな方向性というのは当然ございますので、取り組む農業者の不安解消等のため、先ほどから申し上げます生産コストの削減、安定生産に資する技術開発等の動向等も注視しながら、取り組んでまいりたいと考えております。
○山下隆夫君
 なかなか議論がかみ合わないところがありますし、なかなか前向きに考えていただけない。私の能力不足で、いい回答を引き出すことができておりませんけれども、収入の問題を農家任せにせず、行政で支える仕組みをつくったことで有名な千葉県いすみ市の担当者は「支援する側の人たちが、どうやったら有機農家が安心して取り組めるかということを頑張らなくてはいけない。また、農薬を使わないでつくられた農産物をしっかり買い支えてあげる社会でないと、農業を続けていけない」と報道番組の中でおっしゃっています。そうした観点から、有機農業を推進したことで、収入も安定し、移住者が年々増加をするほどの大人気となっています。その報道番組の中では、市長が「今はうちが1人勝ちの状態です」というようなことをおっしゃっていました。
 少子高齢化や安定した収入が見込めないこと等により、耕作放棄地が本市でも年々増加をしています。こうした課題を解決する大きな可能性を有機農業は秘めていると私は思います。有機農業を目指す人にとって、耕作放棄地は宝の山と言われているそうであります。
 有機農業推進法により、下関市には、有機農業を推進する義務があるわけであります。農業者、消費者、流通事業者、研究者等とともに、有機農業を推進する。その旗振り役は地方公共団体である、下関市であるということを改めてしっかり自覚をして、今後取り組んでいただきたいということを申しまして、私の質問を終わります。よろしくお願いします。(拍手)
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