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9月20日(金) 本会議(一般質問5日目)
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内容
会議録
第3回定例会
9月20日(金) 本会議(一般質問5日目)
早川 幸汰 議員
1.下関市立美術館について
【下関市議会 本会議確定版】
△一般質問
○議長(香川昌則君)
日程第2、これより「一般質問」を行います。
本日は、御手元に配付の通告一覧表により、24番から最後の28番までの通告者について行いたいと思います。
それでは、順次質問を許します。24番、早川幸汰議員。(拍手)
〔早川幸汰君登壇〕
○早川幸汰君
おはようございます。無所属の早川です。今回は、下関市立美術館についてでございます。私は、美術館が開館から40年という長い期間をかけて世間との感覚がずれた施設になっているのではないか。その結果、社会に向けて、使命や存在意義を十分に発信できていなかったのではないかと思っています。
このような違和感を持ったのは、開催される企画展を目にするたびに、行きたいと思う展示が少なく、感覚的にですが、限界が来つつあるなと感じたことがきっかけでした。調べるにつれ、これは根本的な非常に大きなものを変えないといけない、かつ改善し得る最後の時期に来ているのではないかと思うようになりました。今回の質問を通して、皆さんには美術館の在り方について再考していただける機会になるのではないかと思います。
それでは、通告に従いまして質問をさせていただきます。まず、下関市立美術館の設置の背景と目的についてお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
下関市立美術館は設置条例の第1条に掲げます、市民の教育、学術及び文化の向上に資することを目的として設置をしております。美術館は、下関市の市制施行90周年を記念する事業の一環として建設され、昭和58年に開館いたしました。
ちょっと紹介させていただきますと、その基礎となりましたのは、下関出身の実業家、故・河村幸次郎氏による下関市への美術品コレクションの寄贈です。地域ゆかりの画家、狩野芳崖、高島北海、香月泰男らの作品のほか、古代オリエントの工芸品など、ほかに例のないユニークな性格を持つこのコレクションを核として、所蔵品の拡充に努める一方、幅広いテーマによる企画展の開催、また調査研究、普及教育の各業務にも併せて取り組んでいるところでございます。
○早川幸汰君
市制90周年で、1983年にできたということでした。
それでは、次の項目に移ります。まずは運営体制についてです。美術館に関する条例・規則はどのようなものがあるか、お示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
市立美術館に関する条例・規則は、下関市立美術館の設置等に関する条例、下関市立美術館の設置等に関する条例施行規則及び下関市立美術館の観覧料等に関する規則がございます。
○早川幸汰君
その三つが主なものということで、それではどのような方針で運営をされているのでしょうか。ホームページにあるような条例・規則、基本方針、活動内容について、法的な根拠を踏まえてお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
美術館の運営につきましては、条例・規則によるところでございますが、「資料収集、保管展示して、公衆の利用に供し、その教養、レクリエーションに資するもの」として規定されております博物館法、あるいは「年齢、障害の有無、経済的な状況等に関わらず、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又は創造することができるよう環境整備を図る」等と規定されております文化芸術基本法、こういったものの理念等も踏まえて、運営に努めているところでございます。
また実務におきましては、文部科学省による「博物館の設置及び運営上の望ましい基準」に基づき、体制の整備に努めているところでございます。
○早川幸汰君
前提として博物館法、そして文化芸術基本法が基となっているということでした。それでは美術館の運営について、1年の流れ、そして中長期の計画はどのような組織がどのような決定をいつしていくのか、お示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
美術館の運営におきましては、管理運営、展覧会開催、美術資料収集保管、調査研究、普及教育の五つの業務区分を設定いたしまして、施設管理を行うほか、展覧会の開催をはじめとする学芸業務を計画的に実施しております。
展覧会の会期の設定をベースに年間のスケジュールを調整することとしており、作品の収集、展覧会の開催等の学芸業務につきましては、館長を中心に、学芸・管理の両部門の職員が立案し、これを教育委員会が全体の計画の中で検討の上、最終的な決定を行っております。
なお施設の長寿命化に向けて、令和2年度末に策定いたしました個別施設計画においては、展覧会の開催についての長期計画も組み入れたものとなっていることから、美術館運営に係る中長期的な計画として位置づけをしております。
○早川幸汰君
今言われたところでいうと、館長と学芸員、そして教育委員会で決めているというところでした。今言われた以外に、ガバナンス等はございますか。
○教育部長(藤田信夫君)
美術館の運営に関しまして、館長の諮問に応ずるとともに、館長に対して意見を述べる附属機関として、下関市立美術館協議会を設置しております。また美術資料の収集を行う際は、美術資料収集の適正を図るため、外部の専門家に審査を委嘱しているところでもございます。また社会教育施設の一つとして、必要に応じまして、社会教育委員からの意見を受ける仕組みとなっております。
○早川幸汰君
今言われた美術館協議会の議事録、確認し得る2014年からチェックしましたが、そこではあまり深い議論にはなっていないように感じます。そして社会教育委員会の中でも深い議論をされていないように感じます。ちなみに美術館協議会というものがありますが、そちらの設置目的についてお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
下関市立美術館協議会は、博物館法第23条第1項の規定に基づきまして設置された附属機関でございます。美術館の運営に関し、館長の諮問に応ずるとともに、専門的立場や来館者からの視点等も踏まえて、館長に対して意見を述べる機関となっております。
○早川幸汰君
先ほど申し上げましたが、あまり深い議論をされていないということと、あとは館長と学芸員が中心に方針を決めているということを勘案すると、外部からの干渉がほとんどない運営体制であり、美術館業務に対するチェック機能が乏しいように思います。それに加え、美術という学問の知識がないと意見しづらいという無言の圧力により、行政内でもほとんど誰も口を出せていない状況にあると思います。
次に、人員体制についてです。美術館を運営する組織として、どのような人員体制で運営しているか、設定の根拠等があればそれも踏まえてお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
人員体制でございますが、令和6年度につきましては、館長を含む6名が学芸員資格を有する学芸員として、また事務職員として4名が配置されており、計10名の人員体制で美術館運営に当たっているところでございます。配置につきましては、年度年度の人事の中で適正に配置をしていると考えております。
○早川幸汰君
これは、かつては博物館法に定める人員で決めておられたそうですが、今は感覚でやられているという感じだと思います。目的次第ではありますが、増員・減員は可能だということが分かると思います。
それでは、開館時と現在の運営人数に相違がありますか。また、現在の美術館に定められる役割を果たす運営のためには何名の人員が必要か、お示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
美術館が開館いたしました昭和58年度には、館長、副館長の下、管理係及び学芸係の2係を置く形を取っておりまして、管理係に4名、学芸係に6名の計12名が配置されておりました。現在は先ほど申し上げましたとおり、10名が配置されている状況でございます。
運営に必要な人数ということでございますが、開館から40年以上を経て、施設の老朽化、また館を取り巻く環境の変化等、多くの課題はございますが、業務の効率化等にも努め、現状の人員により様々な課題に対応してまいりたいと考えております。
○早川幸汰君
開館当初がもともと12名でやられていたということは聞いているのですけれど、今10人ということで、今、努力に努めると言われていましたけれど、やることも増えていると思うので、1人が負担する業務が昔に比べて多い状態にあることが分かると思います。
続いて、現在の学芸員はどのような専門であるか、端的にお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
在籍する学芸員について、その専攻を申し上げます。館長が日本近代美術、館長補佐が西洋美術、主任が日本近代美術、また会計年度任用職員の学芸員3名につきましては、1名が日本近代文学、1名が西洋近・現代美術、1名がデザイン・工芸となっております。
○早川幸汰君
内容については僕もあまり知りませんが、市民に対してどのような影響を与えるかは別として、下関市が所蔵する美術品に対してはマッチした人員であると思います。しかし、戦後の美術を指す現代美術に関しては弱い状況にあると思います。
続いて、美術館業務におけるデジタル化の取組についてお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
今年度の取組といたしまして、観覧料等のキャッシュレス決済に対応するため、POSレジ等の機器導入事業を進めているところでございます。
○早川幸汰君
ここで、コロナ禍の経験や情報保存の観点から、令和4年に公布された博物館法の一部を改正する法律の中で、資料のデジタルアーカイブ化が事業として追加されており、公立の美術館でも取組が進んでいるようですが、当市ではまだのようです。
予算や人員により、デジタル化等取り組まなければならない業務の遅れはもとより、SNSの運用、広報、教育普及等、予算があれば外注すべき仕事を、本来、学芸員に求められている仕事以上に業務が及んでいる状況が多々見受けられます。
この部分に関して、専門性の低さを問われるべきではないのですが、美術館協議会では度々指摘をされており、学芸員の方を気の毒に思います。そんな状況下でも、現在の美術館運営においては、美術の知識以外に、経営、組織運営、マーケティング、広報宣伝など、多岐にわたる業務へ対応していくことが必要になってきます。
次に、来場者についてです。傾向をつかみたいので、来場者の推移を開館から5年ごと、それと近年5年度分の内容を端的にお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
入館者数について、開館の翌年度の昭和59年度から5年ごとの推移を申し上げます。単位は万人ということで御了解いただければと思います。
昭和59年度は12.7万人、平成元年度が18.8万人、平成6年度が10.6万人、平成11年度は10.2万人、平成16年度は8.8万人、平成21年度が6.8万人、平成26年度は5.7万人でございました。
また近年の5年分でございますが、令和元年度が5.3万人、令和2年度が2万人、令和3年度が2.7万人、令和4年度が2.8万人、昨年度――令和5年度が4.6万人となっております。
○早川幸汰君
明らかな減少傾向にあるというのが分かると思います。より詳しい来場者の推移はタブレットの資料を御覧ください。
〔説明資料を議場内ディスプレーに表示〕
○早川幸汰君
私は、より多くの市民が実際に美術館へ足を運ぶことこそが、設置条例第1条の市民の教育、学術及び文化の向上に資することを達成するための手段として、現状一番有効であると考えます。今後、デジタル化によって恩恵を与える範囲が広がれば、この考えの重要性は下がるかもしれませんが、現在の美術館の受益者が、ほとんど入場者に限られているため、現状では関わりを増やすことでしか、役割を果たしていくことが難しいためです。
次に、平成29年度の協議会にて、当時の館長が来場者の目標に関し、一応8万人を目標としていますとの答弁がなされていました。数値目標を設定しておられるのであれば、算定の根拠、明記されている箇所も併せてお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
入館者の数値目標について設定、公表しているものはございませんが、展覧会の内容に基づきまして、入場者数の見込みを予算編成時に立てておりまして、この見込み人数が来場人数の目標値の一つということで考えております。
○早川幸汰君
今見込みということで、ただの予測であり、自発的に設定した目標を達成するための数値ではないように思います。自分たちの目標がないのであれば、同規模の自治体の類似施設との比較をしてもいいのではないかなと思うのですけれど、そのような比較評価をされていれば、お示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
他の美術館で開催の企画展、入館者数等について、参考にすることはございますが、内容、また地理的な条件が異なることから、比較しての評価は行っていないということでございます。
○早川幸汰君
分かりました。文化庁の文化審議会の中では、政府の失敗に関する代表的な理論、政府の失敗の源泉というものを挙げて、その中で組織の目標に対する指摘として、市場の組織は市場シェア、事業の損益等の市場における指標を目標値として活用することができる。これに対して、非市場組織の場合、そもそも非市場活動に対する市場が存在しないこと、また市場に競合する相手がいないことから、外部要因に基づく目標設定が困難である。そのため、組織の目標設定にあたり、不明瞭で信用性の低い組織内部の基準によって目標を設定する事態が生じる。まさにこのとおりだと思います。この指摘にあるとおり、計画等に対する明確な目標設定がないこと。これは来場者の増減のような目に見える数値以上に、美術館が目的に対して組織として成長する姿勢を慢性的に阻害する要因にもなっているように感じます。
次に、予算に関してです。まず収入に関して、観覧料の推移について開館から現在までどのような傾向にあるか、昭和59年度と令和5年度の金額を踏まえてお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
観覧料収入につきまして、昭和59年度の実績は約2,967万円で、令和5年度の実績額は約1,544万円となっております。展覧会の入場者数が減少していることから、観覧料収入額も減ってきている状況ということでございます。
○早川幸汰君
減っているということでした。事前の聞き取りの際に、入場者数の箇所でも同じことを言われたのですが、数字ばかりやり玉に挙げられても困るみたいな言い方を館長にされました。確かに学術は、このような数値のみで判断されるべきではないと思いますが、逆に軽視してよい理由にはならないと思っています。そういうからには学芸員が数字には表れない部分、来場者がどの作品に興味を持っているかとか、伝えたいことを書いたパネルを読んでくれているかとか、来場者同士が何を話しているかとか、展覧会をチェックして、次の運営に生かしていくようなサイクルを40年間続けておられれば、結果として美術館を好きになってくれる人を増やすことにつながっているのではないだろうかと思うのですが、実際はどうなのか気になるところであります。
次に、支出に関する部分についてお伺いします。展覧会の予算に対する金額の推移について、開館から現在までどのような傾向にあるか、先ほどと同じようにお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
展覧会開催予算につきましては、昭和59年度は6,000万円で、令和6年度――今回の予算ですが2,461万円となっております。展覧会の開催予算は、年間に開催する回数及び規模、また企画展の内容により増減がございますが、開館当初と比べると企画展の実績数そのものが減っていることもあり、歳出予算額は減少している状況でございます。
○早川幸汰君
分かりました。それでは、美術購入費の推移について、開館から現在までの額を交えて、どのような傾向にあるか、お示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
美術作品、資料の購入予算につきまして、昭和59年度は開館当初ということもあり、1億5,000万円でございました。一定規模の資料収集に努めてきたこともあり、令和6年度は予算の計上はしておりません。なお、今後収集方針に従いまして、真に必要と判断する作品・資料がある場合は、収集に必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。
○早川幸汰君
今、非常にいいような言い方を言われておられて、美術品も集まっているような言い方をされていたと思います。収入面、そして使える金額も明らかに減っているところであります。この部分を見ると、行政内での重要性は薄れていると言われてもしようがないと思います。予算を確保するためには、目標、計画、数値等を用いた根拠に基づく要求が必須だと思いますが、その辺りも聞き取りの感じでは、長い間されていないようでした。
美術購入費について、平成28年度の美術館協議会の議事録には、今、予算が100万円という話がありましたが、昔はもっとたくさんの予算があったと思います。これは先ほど言われた1億5,000万円ぐらいということかなと思います。ちなみに歴史博物館が開館し、今、毛利家の備品を大量に購入しているため、予算がそちらのほうにいっている関係もあると、当時の教育長の答弁もありました。その後、美術品の購入費にそれ相応の額が戻ったことがないのはもはや言うまでもありません。
また、令和元年度の協議会では、購入予算はゼロでございます。せんたく会議以降、美術品購入予算の枠がなくなって3年になります。どうしても欲しい特定の作品がある場合は要求して、その都度、財政当局に掛け合う形となっています、今言われていたところですね。ただし、これまでのところ、予算の折衝の際、話題にもしてもらえない状況です。
また、令和3年度の協議会では、「下関市の財政状況も好転するとは思えないため、活動が手作り的なものになっていくことは致し方ありませんが、地域のポテンシャルは、いろいろな人材の中にあるので、そことつないでいくことも美術館の役割だと考えます。予算を倍に、収益を倍にという話ではなく、地域の宝への目配りが足りていなかったというのが我々の反省です」というのが40年間運営した結果言われていること。とても寂しいなと思います。
このように最初から予算をもらうことを諦めています。当初の基本計画を、現状の都合に合うように解釈し、勝手に方針を変えているとしか思えません。聞き取り時も感じましたが、財政の財源の関係で予算が減らされているという外的要因の回答が多く、自分たちに課せられている目標達成の認識の甘さに問題があると感じます。
次に、令和5年度に招待券を使用した入場者数と、招待券の対象となる展示に来た人に対する割合をお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
この答弁の前に、美術品の収集もしくは美術館の改修等につきましては、必要なものは一生懸命、毎年度毎年度しております。厳しい財源の中ではありますが、しっかり教育委員会も美術館とも協議しながら、必要なものは要求していくという姿勢は変わっておりませんので、そこは御理解いただければと思っております。
それを踏まえた上でございますが、令和5年度の招待券による入場者数は2,678人でございます。また、招待券の対象となった企画展の総入場者数につきましては2万724人で、うち招待券で入場した方の割合は13%となっております。
○早川幸汰君
先ほど言われていたところは僕は聞き取りのときには全く感じなかったのでそこは今言われてどうにかなることだとは思っていないので、この場でいいようにしないでいただきたいなとは思います。
2,600人ということで、大体1人1,000円なので、金額でいうと260万円なので、金額ではそんなに大したことはないのかなと思うのですけれど、無料招待券は主に展示会の協力に対するお礼、それとお偉いさんに配られているようです。それもいいのですが、よい運営をしているから応援してもらえるという状況ではないので、タダ券を渡しているようになっていると思います。無料にしないと客を呼べない、客数を増やせないからやっているようにしか見えません。この状況が認められるのであれば、そもそも市民全員タダでもいいのではないかと思います。昔からの慣例を考えることなく続けているのでしょうが、私にはよく理解できません。
次は、その他ソフト面についてです。先ほどからあるように、少ない人員で運営をせざるを得ない状況でありますが、企画展を開催するに当たり、その他美術館研究機関との関わりはどうなっていますか。実例とともにお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
他の美術館及び専門機関との連携につきましては、展覧会の開催に係る作品等の相互対応、共同研究その他があり、開館以来、事業運営の大きな力となっているところでございます。
実例といたしましては、令和5年度の開館40周年記念事業「狩野芳崖、継がれる想い」は、国立博物館収蔵品貸与促進事業に採択されたことで、東京国立博物館の所蔵品の出品、またこれに伴う輸送経費、広報経費等の支援を受け実施したところでございます。
また、令和2年度には、現代美術の収集と研究で世界的に著名なタグチアートコレクションの協力によりまして、特別展「現代美術の最前線―タグチアートコレクションより―」を開催しております。
また、令和元年度には特別展「やなせたかしのきせき アンパンマンを生んだひと」について、高知県の香美市立やなせたかし記念館・アンパンマンミュージアムの協力を得て、その所蔵品による企画展示を開催したものがございます。
○早川幸汰君
経費、人員面から考えても、このような取組は、市民に対してクオリティーの高い、企画展の運営をしていくためには、これまで以上に連携や強度を上げる必要があると思います。ただ今聞いた感じ、学術機関とかとあまり絡みがないと思うので、地元とのつながりとかができると思うので、そういうところともやっていくのがいいのかなとは思いますが、学術的なところなので僕はあまり言えないところでございます。引き続きよろしくお願いします。
そもそもの話ですけれど、企画展を開催するに当たり、どのような考えで企画されているかお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
美術館におきましては、地域と関連の深い美術家やコレクターに関わるものを中心に作品を所蔵しているところでございます。それらの研究成果を分かりやすく紹介することを基本に、地域ゆかりの美術の評価を高め、魅力が十分に伝わることを大切にして企画を立てているというのが主でございます。
○早川幸汰君
地域のものを大事にして研究し、その結果を発表する場みたいな感じだったと思います。それでは、ここ近年増えている漫画、アニメの企画展について、どのような考えで企画されているかお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
漫画、アニメをはじめとしたサブカルチャー――サブカルチャーと呼んでいいかどうかはありますが、こういったサブカルチャーは、日本での人気や注目度の高さばかりではなく、2019年には大英博物館が、大規模な漫画展を開催するなど、世界的に評価を高めてきております。現在、美術館では、「エロイカより愛をこめて」で知られる下関出身の漫画家・青池保子さんの展覧会を開催中ですが、2008年には水野英子さん、文月今日子さんを加えた「少女漫画三人展」を開催しております。また、2019年に開催いたしました「さいとう・たかお ゴルゴ13」展も好評を博したところでございます。
今後も関係団体等の協力を得る必要がございますが、豊かな漫画文化を紹介する機会を設けていきたいと考えております。
○早川幸汰君
非常に失礼な発言になるかもしれませんけれど、サブカルチャーというところで、今、大英博物館、世界的な潮流を酌んだ話をされていたと思うのですね、ただその中に、今されているものが含まれているかと言われると、感覚的に僕は違うのではないかなと思って、大きい漫画というくくりで捉え過ぎなのではないかなと思います。
企画展を実際に見に行くと、展示の質自体は非常に高くて、毎回よかったなと満足して帰ります。ですが正直に申し上げると、題材そのものが、市民に対して広く興味をそそられるものではない場合が非常に多いと感じます。今の組織体制では、学芸員の方が積み上げたものを市民に届ける手段を持ち合わせていないように思います。
今さっき言われた、2019年に開催されたゴルゴ13展では、なぜ下関市立美術館でやるのかと、議会での質問に対し、直接関わりはないが、下関市出身の直木賞作家である船戸与一さんが外浦吾朗のペンネームで、ゴルゴ13の脚本を30本ぐらい手がけておりましてと、あたかも市民全員が知っているかのような認識で言われていて、誰がそんなこと分かって行くのだろうと思ったり、あとは、今の青池保子さんの展示に際しても、ふだん読まないであろう漫画を学芸員さんが買ってみんなで読んだと言っていたりとか、先ほどあった現代美術、タグチコレクションというのも、想定した半分の集客しかなかったということを言っていたりとか、どのようなコンテンツが世間の興味を引くのか、例えば漫画であれば、「呪術廻戦、今月で終わるよね」とか、「今世界でこれが熱いよね」とか、そういう感覚があまりないのではないかなと思っていて、あとはマーケティングもほとんど考えていないように感じています。いずれにしても美術館の本質的な目標をクリアするための展示でなければならないと思っています。
今の美術館を支えているのは、バブル期以降、美術館に足を運んできた世代であり、企画展はその世代の集客を見込めるものが多い傾向にあります。今言われた展覧会もそうだと思います。若者にとっては、入場料が高く、敷居の高い場所になっているように思います。結果として、将来の鑑賞者が育たず、美術館は今後ますます衰退していくと思います。こうした現状と向き合いながら、若い世代の視点に立って、美術館に興味を持ってもらえるような活動を地道に続けていかなければならないし、美術館の役割と存在意義をもっと社会と共有する努力を積み重ねる必要があると思います。
それでは最後に、ハード面についてお伺いします。建物はいつまで使用していく予定なのか、端的にお示しください。
○教育部長(藤田信夫君)
現在の施設の目標使用年数につきましては、個別施設計画において竣工から65年と定めており、現時点で41年目を迎えております。2047年度まで使用する計画としております。
○早川幸汰君
使用期間が65年で後約24年残っているということで、先ほどの説明でありましたけれど、個別施設計画の中に、その部分に入れなくてもいいのではないかという計画を入れ込んでいたりされていたと思うのですけれど、このもっともらしく言われている個別施設計画は、令和3年に策定されていて、外部公開されていないのですね。議会でも報告されていないようなので、ここにいるほとんどの人が見たことがないと思います。さすがに公開ぐらいはしておくべきではないかと思っています。
そして、こちらの総論に書かれている、地域の芸術文化を収集し保存することを第一とし、という文言が優先順位に対して、初めて明記されているのではないかなと思っていて、ここはかなり気になっているところです。以前は設置条例第1条にある市民の教育、学術及び文化の向上に資するという部分を基本に、方針や活動内容があったと認識しております。ただ、誰もチェックしていないことをいいことに、時代とともに美術館の勢いが衰退した現状に合わせて、都合のつきやすい、美術品の保存とかというのは、都合のつきやすい目標かなと思うのですけど、市民のためではない言い訳的な目標にスライドしているように僕は思います。
最後になりますが、美術品の収容能力は現在どの程度残っているのでしょうか。2016年の美術館協議会の議事録には、適切に所蔵していくという点では物理的に難しくなってきている面があるので、その辺のところは今後しっかり手当てしていかなければならないと思っていますと、8年前に既に問題になっていたようですが、そのところはどうでしょうか。
○教育部長(藤田信夫君)
収蔵庫をはじめとする収蔵部門の各施設につきましては、当初設備された収納器具の収容能力の100%を超えている状況でございます。ただし、既存の収納方法の見直し、収納棚やケース等、関係機材の追加など、調整により新規の収集にも対応している状況でございます。
○早川幸汰君
100%を超えているということで、個別施設計画の中には、今後どうしていくかみたいな、そのような計画は組み込まれていますか。
○教育部長(藤田信夫君)
今詳細まで把握してございませんが、当然今後増えていく、これは購入ではなくても寄贈・寄託等々でも増えてまいりますので、そういったものに対応できるようなものは考えていくようになっていると承知しております。
○早川幸汰君
多分今の答弁からいうと、明確にどのようにどこに物を置く場所を増やすとか、そういうことは計画されていないのではないかと思うのですけれど、聞き取りの際に、第一声は、建物的には100%を超えているのですけれど、置き方的には今も別に置けるんですよね、みたいな言い方をされて、別に僕はそんなことは聞いていなくて、美術品の大きさにもよるみたいな言い方をされているのですけれど、現状として100%を超えているわけではないですか。目的を一番にするものをスライドして、文化を収集し、保存することを第一としている割には、計画が今後されていない状況というのは非常にまずいのではないかなと思っていて、計画では25年、今後使用していくのですけれど、その間に寄贈とか寄託、収集しなくてはいけない美術品が出たときに困ると思うので、早急に計画すべきだなとは思っています。というか自分たちの基本方針にある収集・保存という使命を果たしていくためには、既に動いていないとまずいでしょうと思うのが普通の感覚だと思います。
美術館の25年後を見据えたときにどうしていくか、終わりに向かって墓じまいするのか、このまま何もしないのか、市民にとって財産となるような運営をしていくのか、向かうべき方向は一つであってほしいのですが、それはこれから決めていかなければならないと思います。
最後に、今後の運営についてです。るる運営の全体についてお聞きしましたが、美術館をこのまま放置した未来を皆さんはどう想像しますか。小手先の対策では延命処置にもならず、根本の解決にはつながらないことは容易に想像できるはずです。
第3次下関市総合計画案の81ページの記述にも見てとれるように、現実に向き合わずに定めた理想だけの取組の方向、中身のない主な取組からも市政における重要性の低さが見てとれます。この状況に至った責任は、関わってきた人全員にあると思います。そして、これから関わっていく人たち全員で、未来に向けて考え直す必要性が早急にあると思います。学芸員はもとより、市長や議員、教育や財政、観光、都市整備、その他もろもろの取り巻きがこの状況を理解し、下関全体を考えて行動に移さなければなりません。今日はこのことが共通認識として持っていただければ、質問した意味はあったかなと思います。私は開館当初の希望に満ちていた頃の気持ちより、高い意識を持って改革に取りかかるべきだと思います。美術館の条例・規則、基本方針、活動内容を根本的に見直し、検討する必要があると思いますが、今後の見通しについてはどのようにお考えでしょうか。
○教育部長(藤田信夫君)
今後も時代の変化に応じまして、市立美術館としての役割を果たしていくための活動を継続していくとともに、施設整備など先ほど御指摘ありました点もございますが、そういったものの機能強化に努めてまいりたいと考えております。また今後美術館として魅力向上につながる運営の在り方につきましては、継続して検討してまいりたいと考えております。
○早川幸汰君
2005年6月16日、文教市民委員会では、当時の美術館長は、日本にある美術館は厳しい世の中で生き残るため、博物館協議会などが中心となり、博物館の在り方という指針を出して、その中で美術館、博物館というのは、それぞれ評価を定めて判断していくことが望ましく、それは既に先進の美術館、博物館でも実施している。大変様々な評価システムでやっており、そういったものも参考にしながら、下関においても、どういうものにするか考えていかなければならないと、約20年前に発言されております。そこから全部の議事録とか見たのですけれど、そのような動きは一切されていないのではないかなと思っています。
石川県にある金沢21世紀美術館では、ほとんど何も明記されていない下関市の条例とは違い、第1条、目的及び設置において、「本市は、世界の多様な美術表現を広く市民に公開するとともに、芸術活動への参画を通じたさまざまな出会い及び交流の機会を提供し、もって本市の新たな文化の創造とまちのにぎわいづくりの創出に資するため、美術館を設置する」と、かなり分かりやすく、また、第3条においても、明確に取り組むべき事業を9項目に分けて記しています。これからの美術館の在り方について、ワーキンググループ、検討会の設置や改善計画、再生計画等、その他の計画について検討が必要だと思いますが、その辺の見通しはどのようにお考えですか。
○教育部長(藤田信夫君)
開館以来、美術館運営に関しまして館長に意見を述べることができる附属機関として、最初に御紹介いたしました下関市立美術館協議会を設置しておりますので、その他の新たな検討組織などの設置は現段階では考えておりません。
また施設の存続の基礎となる個別施設計画につきましては、今後の改修等の進捗に応じまして、内容の更新をはじめとする必要な調整は行ってまいりたいと考えております。
○早川幸汰君
今のとおり、もう美術館とか教育部とかで、もうどうしようもないような状態というか、僕がこうやって言ったりとか、館長にこうやって言ったりとか、オフィシャルの場なので、個人の意見を言うことはできないのですけれど、そういう姿勢であれば、もう墓じまいすると言っているとしか思えないですよね。もう今の状況で、美術館をどうしていくかということが、明確に言えていないという時点で、僕はもう25年で終わりでいいのかという、そういう姿勢にしか感じないのですよね。もう明らかに、計画をつくる前の、例えば唐戸市場とかでも、在り方検討会とかやって予算があったり、エリアビジョンも、まず、どうやっていくかというためにお金を使って、どうやっていくという計画を出して、それに実行を移すためには予算がどれだけ要るとかやって、今進んでいるところがあると思うのですけれど、そういうのがない限りは、僕も美術館はもう墓じまいするつもりなのかなというのを思っています。それは結局、今まで先人の学芸員さんたちとか、あと最初に寄贈してくれた人たちの気持ちとか、どうやって美術館をやっていくかというコレクションの積み上げの中で、今の学芸員さんたちがそれを使ってどういう展示をするかという流れが、結局社会的に、公益性があるということで税金が使われていると思うのですけれど、その辺が僕は全く今の答弁では感じ取れないし、もう美術館単体ではどうしようもできる状況ではないのではないかなと思っています。
ちょっと別の話になるのですけれど、下関市立美術館の来場者と比べて、そこまで差がない静岡県立美術館では、2022年から5か年計画を策定し、将来の運営に対して危機感を持って、現代に合った美術館の活動を発展させようと取り組んでいます。この前、市立大学の経営状況の調査のときにビジョンを出しておられたのですけれど、そういうビジョンとかも、下関市にありながら、すごくいい取組というか、話し合われてビジョンをつくっていらっしゃったので、別にできないことではないかなと思うのですけれど、その姿勢がないのであれば、もう見放されて当然かなと、数値も出ているし、それが学術だからそこで判断するなと言われても、そうですかという冷めた目で見られていると思っていただかないと、今後の美術館に関しては、正直すごく厳しいのではないかというのは明白だと思います。
将来にわたり、美術館をどう運営していくか、まずは今後の計画の検討、形だけではない計画の策定が必ず必要だと思います。そして、それらを達成するための予算要求などをしなければならないと思います。
僕は、地元でもありますし、個人的にはすごく美術は好きなのですけれど、そうではなかったら別に山口市の美術館に行けばいいやとか、北九州市に行けばいいやみたいな状況は、非常に先人に対しても失礼ですし、今まで使ってきた税金とか、寄託してきた方の気持ちを考えると、やはりきちんと計画すべきではないかなと思うので、これは美術館だけの問題ではないと思うので、皆さんよく考えて、今細々したことを言っても僕はしようがないと思っているので、質問を何個か考えていたのですけれど、それを言っても伝わらないという、それをしても意味ないなと思っているので、こういう大きい部分を変えてはどうですかというのを言って、そういうつもりがあまりないという返答はすごく悲しいなと思います。
今後の在り方について、希望を持って終わりたいところなのですけど、僕としては利点である下関の独自性を残したまま、目的を達成するために、完全ではなくていいので失敗しながら前に進む選択をされることを期待して、この質問を終わろうと思います。ありがとうございます。(拍手)
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