録画中継

第2回定例会
6月15日(木) 本会議(一般質問1日目)

宮野 直樹 議員
1.共生社会の実現に向けた障害者差別解消の推進について
2.重度障害者の就労支援について
3.医療的ケア児のレスパイト支援について
【下関市議会 本会議確定版】

○副議長(安岡克昌君)
5番、宮野直樹議員。(拍手)
  〔宮野直樹君登壇〕
○宮野直樹君
無所属の宮野直樹です。このたびは、共に生きる共生社会の実現に向けて、三つのテーマで通告に基づき質問をさせていただきます。
一つ目は、共生社会の実現に向けた障害者差別解消の推進についてです。初めに、障害者の現状についてお尋ねをしていきます。本市の障害のある方の人数と人口に対する割合を教えてください。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
本市の障害のある方の人数と人口に対する割合についてお答えいたします。令和5年4月1日現在の本市の障害者手帳の所持者は、1万7,395人となっております。手帳の種別ごとでは、身体障害者手帳の所持者が1万2,104人、療育手帳の所持者が2,536人、精神障害者保健福祉手帳の所持者が2,755人となっております。令和5年4月1日現在の本市の推計人口が24万9,012人でございますので、本市の人口に対する障害のある方の割合は約7%となります。
○宮野直樹君
本市においては、24万9,012人に対して障害のある方の割合が約7%ということが分かりました。令和4年障害者白書によると、我が国の障害者の総数は964万7,000人、これは人口の約7.6%に相当します。平成28年が6.7%であり、年々その割合は増えている状況です。そこでお尋ねします。本市において障害のある方の数の推移はどのようになっているでしょうか。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
本市の障害のある方の人数の推移についてお答えいたします。平成28年4月1日時点の本市の障害者手帳の所持者は1万8,250人で、平成31年には1万8,366人と増加しましたが、その後は減少に転じまして、令和5年には1万7,395人となっております。
ただし、手帳の種別ごとに見ますと、身体障害者手帳の所持者が、平成28年の1万3,857人から、令和5年は1万2,104人と減少しているのに対し、療育手帳の所持者は、2,193人から2,536人に、精神障害者保健福祉手帳の所持者が、2,200人から2,755人にそれぞれ増加しております。
また、本市の人口に対する障害のある方の割合については、平成28年が約6.7%であったのに対して、令和5年は約7%と増加しております。
○宮野直樹君
自然減によって総数については減っていますが、人口に対する割合は増加しています。また、特に療育手帳の所持者、精神保健福祉手帳の所持者が増えていることは分かりました。またこの数は、障害者手帳をお持ちでない方は含まれていないため、実際にはまだ多いのではないかと思います。あわせて、本市の高齢化率は、令和5年4月30日現在で36.3%となっています。また、下関市人口ビジョンによると、2045年には高齢化率が40%の水準に到達すると見込まれています。つまり、65歳以上の障害者が相当数いると考えても、市民の4割以上は障害者または高齢者となっている社会が到来しており、今後ますます障害者や高齢者の割合が増えていきます。こうした現状において、障害者差別解消法の考えや合理的配慮の提供は、障害者のみならず多くの方に必要となるため取り上げさせていただきました。
次に、合理的配慮の基本的考え方について御質問をさせていただきます。本市においては、下関市障害者計画及び下関市障害福祉計画、下関市障害児福祉計画が作成されており、その基本理念として、障害のあるなしにかかわらず誰もが地域から必要な支援を受けながら、地域との関わりの中で、自分らしく暮らすことのできるまちが掲げられ、各種障害福祉施策を実施されています。
私の感覚ではありますが、例えば地域で老いる、また地域で子供たちを支える、そうしたことに比べて、障害のある人が地域で生きることについては、まだまだ十分な理解を得られていないと感じています。障害のある方が住み慣れた地域で自立し安心して生活していくためには、障害に対する社会全体の理解を深め、障害のある方に対する偏見や差別をなくしていくことが重要です。
我が国では、2014年、国連において障害者権利条約を批准し、2016年、障害者差別解消法が施行されました。この法律により、障害のある人に対して不当な差別的取扱いを行うこと、また合理的配慮をしないことが差別に当たり、市役所など公的機関においては、不当な差別的取扱いは禁止、合理的配慮は義務、民間事業者においては、不当な差別的取扱いは禁止、合理的配慮については努力義務と定められました。
制定以降も、障害者団体等から様々な意見を踏まえ、検討が重ねられ、2021年5月に法改正が行われ、これまで民間事業者については努力義務とされていた合理的配慮が、改正により義務と定められました。その施行は2024年4月1日とされています。
そのような中、山口県においては、2022年10月11日、障害のある方の人権の尊重、差別の禁止、障害についての理解、これら三つを基本理念とする、障害のある人もない人も共に暮らしやすい山口県づくり条例を制定し、障害を理由とする差別の解消や、障害理解の促進に向けた取組を強化しており、本年4月1日から全ての内容が施行されています。また本年3月には、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針の改定が閣議決定されました。私は今回の法改正や条例制定の最大のポイントは、民間事業者にも合理的配慮が義務化されたことだと考えています。
そこでお尋ねします。合理的配慮の基本的な考え方について、御説明をお願いいたします。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
合理的配慮の基本的な考え方についてお答えいたします。平成26年に我が国が国連において批准しました障害者権利条約の中に、障害は障害者ではなく社会がつくり出しているという考え方が示されております。また、障害者差別解消法は、この考え方に基づき、行政機関や民間事業者が負担になり過ぎない範囲で、障害のある方にとっての障害、いわゆるバリアを取り除くための合理的配慮を行うことを求めております。
合理的配慮を具体的に御説明しますと、車椅子の方がお店の前に段差があって、お店に入れない場合に、バリアに当たるのが段差で、車椅子の方がお店の中に入ることができるようにするためスロープを取り付けることが合理的配慮になります。また、視覚障害のある方に、書類などの内容を読み上げながら説明することも合理的配慮となります。
なお、合理的配慮を行う場合には、行政機関や民間事業者と障害のある方が、対話を重ね、共に解決を目指していくということが重要であると考えております。
○宮野直樹君
合理的配慮について、私なりに分かりやすく説明すると、障害のある人が、障害故にお困りのときは手助けをしましょう。また、お困りになる状況ができるだけ少なくなるように、まずは話し合いましょう。相手の希望に応じて、過度の負担がかからない範囲で対応可能な納得の得られるサポートをしましょうということだと思います。
つまり合理的配慮の基本的考え方は、民間事業者が行っている一般的な顧客対応と何ら変わりません。民間事業者による日頃の対応で自然と実施されている面もあるわけです。一方で、合理的配慮の基本的考え方について、十分な理解がされているとは言えない中で、事業者による合理的配慮の提供が義務化されたことから、今後、差別に関する相談やトラブルの増加も予想されます。こうした状況から、重要になるのは、相談体制と周知・啓発です。そこでお尋ねいたします。本市の相談体制はどのようになっているのか、御説明をお願いいたします。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
本市の相談体制についてお答えいたします。障害を理由とする差別に関する相談窓口は、障害者支援課のほか、本市の障害のある方の相談支援の中核機関である下関市基幹相談支援センターとなります。また、障害のある方への、地域の状況を踏まえた支援体制を協議していただいております下関市自立支援協議会を、障害を理由とする差別をなくすため、関係機関が連携を図ります障害者差別解消支援地域協議会として位置づけております。
○宮野直樹君
相談窓口については障害者支援課、また下関市基幹相談支援センター、また様々なネットワークづくりの仕組みとして障害者差別解消支援地域協議会を、自立支援協議会に位置づけているということが分かりました。
では次に、これまでの相談件数、相談内容、差別の解決に向けてどのような取組があったのか御説明をお願いいたします。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
これまでの相談件数と取組について御説明いたします。これまでの相談件数につきましては、平成28年度に2件、平成29年度は3件ありましたが、平成30年度以降は、個別の相談のほうはございません。その中で、問題の解決に取り組みました、発達障害がある大学生の事例を御紹介いたします。この大学生は、文字での理解はできるのですけれども、耳から聞くことでの理解が難しく、授業の内容を理解することが難しいことから、大学のほうを休学しておられました。このため、単位を取得することが難しいという状況にありまして、学校からは自主退学を勧められたところです。
これに対して、大学生の父親が、このことは障害者差別解消法に抵触するのではないかと考えられ、障害者支援課のほうに御相談がありました。その後、大学生、御家族、それから大学生が利用されている障害福祉サービスの事業所が一緒になって、大学側と話合いを重ね、大学側に授業中に支援者を同席させることを認めていただき、最終的に大学生は復学することができました。問題を解決するため、関係者が建設的な話合いを重ね、ともに解決を目指していく、合理的配慮を体現した事例と感じております。
○宮野直樹君
発達障害の大学生に対して丁寧な御対応、本当にありがとうございます。また相談件数については、近年は上がってきていないという状況の説明がありました。タブレットの資料を御覧ください。
  〔説明資料を議場内ディスプレイに表示〕
○宮野直樹君
これは下関市障害者福祉計画(第6期)のアンケートです。その中では、障害があることで差別されたことや、嫌な思いをすることがありますかという項目に対して、「ある」が15.6%、「少しある」が15.6%、合わせて31.2%の方が、障害を理由とした差別や嫌な思いをしたことがあると回答しています。
また私自身、相談支援専門員として、障害のある方々と多くの対話を重ねてきましたが、差別や偏見から傷つき調子を崩してしまう方、仕事や余暇など諦め感を持っている方に多く出会ってきました。残念ながら潜在した差別事例があるのは現実です。このたび、障害のある方々にヒアリングをさせていただきましたら、相談窓口を知っていたとしても、相談してよいのか分からない、相談しにくい、相談しても何も変わらないのではないかといった意見も伺いました。相談するには勇気が要ることであり、待つだけでは実態の把握や課題の解決には至らないのではないでしょうか。
そこで今後、障害者差別解消支援地域協議会の取組について3点提案です。まず1点目、障害者へのアンケート等による差別実態及び望ましい合理的配慮の把握、2点目、民間事業者へのアンケート等による合理的配慮の事例収集、3点目、事例の収集を通じた合理的配慮に向けたアイデアの蓄積、これらに取り組むことで、障害者、事業者等からの相談や、対応困難事例が生まれた場合に対する助言、情報提供等につながると考えますが、いかがでしょうか。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
議員からの御提案についてお答えいたします。障害のある方や民間事業者へのアンケートを行い、合理的配慮の事例やアイデアを集めてはどうかとの御提案でございました。これらは、障害のある方への差別を解消するために大変有効であると思いました。自立支援協議会の中で、御意見をお聞きするなど、実施について検討したいと思います。
○宮野直樹君
一緒に考えていければと思いますので、また御検討のほどよろしくお願いいたします。
次に、周知・啓発について伺います。タブレットの資料を御覧ください。
  〔説明資料を議場内ディスプレイに表示〕
○宮野直樹君
本年2月の内閣府による障害者に関する世論調査報告書のアンケートにおいて、世の中には障害のある人に対して、障害を理由とする差別や偏見があると思うかといった項目に対して、「あると思う」が88.5%と非常に高い数字になっています。一方、障害者差別解消法を知っているかという項目に対して、「知っている」と答えた方が24%と低い状況です。この調査結果からも、認知度の低さが課題になると考えられます。
そこでお尋ねします。市内の事業者に対して、法改正や条例制定について、きちんと周知がされていますでしょうか。また、障害当事者の方々への周知をされているでしょうか。されているとすれば、その方法も併せてお答えください。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
障害者差別解消法などに関する周知についてお答えいたします。障害のある方への差別の解消に関する周知につきましては、障害を理由とした不当な差別的取扱いの禁止に関すること、障害のある方への合理的配慮が必要なこと、また、相談窓口の情報など、市報しものせきや市のホームページに掲載いたしました。また、平成28年度の障害者差別解消法が施行されたときには、パンフレットをつくりまして、市の窓口で配布をいたしました。
そのほか、本市では平成28年度から市の職員を対象に、障害についての理解を深め、障害のある方への配慮を学ぶことを目的に、あいサポーター研修を行い、市の職員の障害のある方への差別の解消に対する意識向上に努めております。なお、このあいサポーター研修につきましては、受講を希望される団体がありましたら、市の職員が出向いて研修を行っております。
しかしながら、本市では、障害者差別解消法に関する認知度が十分ではないと考えておりますので、令和6年4月1日に施行されます障害者差別解消法の改正に合わせた周知を考えております。
○宮野直樹君
これまでも周知、また、あいサポート運動によって、いろいろな理解等々広めてこられたと思います。また、令和6年4月1日に向けて周知をされるということで、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
その中で2点ほど、周知・啓発について提案です。先ほど御答弁もありましたが、まず1点目は、障害の社会モデルです。社会の中にバリアがあるという考え方、これを広めていただきたいと思います。タブレットの資料を御覧ください。
 〔説明資料を議場内ディスプレイに表示〕
○宮野直樹君
先ほど部長のほうから、合理的配慮の際に御答弁もありましたが、そのときは階段にスロープということでした。このスライドでは、階段の前に、車椅子を使用している方、御高齢の方、ベビーカーの親子がいます。階段しかないため上の階へ登ることができない状況です。ここで障害がどこにあるのかということで、これは社会の中に壁があるというお話です。次の資料では、エレベーターと階段があります。車椅子の方、高齢の方、ベビーカーの親子は、上の階に登ることができます。この方々は何も変わっていません。変わったのはあくまで周囲の環境です。
つまり、障害の社会モデルとは、障害のある人が日常生活または社会生活で受ける様々な制限は、障害のある人、御自身の心身の障害のみが原因ではなく、社会の側にバリアがあることによって生じます。この障害の社会モデルの考え方に立てば、誰もが我が事として合理的配慮等の必要性を捉えることができます。これが重要だと考えています。
2点目、建設的対話の重要性について広めていただきたいと思います。先ほど、発達障害の大学生の方、そのときいろいろな方と一緒にお話をしたということがありました。建設的対話とは、できる、できないではなく、できる範囲で対応可能な代替案、これを提示することです。対話をすることで、お互いを理解し、配慮する側、配慮を受ける側といった一方通行ではなく、対等な関係性を築いていく、このことが重要です。
以上のことから、これまでの周知・啓発、プラス障害の社会モデル、建設的対話の考え方にも力を入れていただきたいと思います。
次に、障害者差別解消条例を基礎自治体で定める意義について伺います。内閣府の障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針には、障害者にとって身近な地域において、条例の制定も含めた障害者差別を解消する取組の推進が望まれると記されています。いわゆる上乗せ、横出し条例を含めて、差別解消のための取組の推進が期待をされており、こうした観点から、山口県の条例も制定されたわけであります。例えば、同じ中核市の島根県松江市の「松江市障がいのある人もない人も共に住みよいまちづくり条例」では、第8条に、市、市民等及び事業者が合理的配慮の促進の取組を行うものとして、情報・コミュニケーション、保育・教育、雇用・就労、住まい・公共交通、防災、文化・スポーツ、観光について個別に記述がされています。また、大分県別府市の「別府市障害のある人もない人も安心して安全に暮らせる条例」では、第4章に、親亡き後等の問題を解決するための取組が含まれています。
私は、民間事業者にも、合理的配慮が義務づけされ、合理的配慮を確実に提供すること、また、市民への周知・啓発を通じて、社会全体の理解を深め、共生社会を実現するためにも、独自の条例が必要であると考えています。
そこでお尋ねします。基礎自治体で独自の障害者差別解消条例を制定する意義をどのように考えているのか、お答えください。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
障害者差別解消条例を制定する意義についてお答えいたします。御提案の地域の実情に即した条例は、障害のある方への差別を解消する取組を推進させる意義があると考えております。
なお、山口県が令和4年10月に施行しました「障害のある人もない人も共に暮らしやすい山口県づくり条例」におきましては、相談者にとって身近な市町を一次的な窓口とし、市町で解決が困難な問題については、山口県が相談やあっせんを行う役割分担の下、山口県内の市町や関係機関が一体となった体制を構築しております。
現時点では、山口県が構築した体制におきまして、山口県と連携を図りながら、障害のある方への差別解消に向けた取組を推進していきたいと考えております。
○宮野直樹君
まずは県内全体でしっかり連携を取っていくというお話の中で、最後になりますが、障害者差別解消法の理念である共生社会の実現に向けては、この法の考え方や合理的配慮の提供など、地域社会へ取組を広げていくことが重要と考えています。
そこでお尋ねします。今後の共生社会の実現に向けた差別解消の取組について、御説明をお願いいたします。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
今後の差別解消に向けた取組についてお答えいたします。障害者差別解消法が改正され、令和6年4月1日より、行政機関だけではなく事業者につきましても、合理的配慮の提供が義務化されますので、今後、障害のある方やその御家族、事業者からの相談が増えることが予想されます。解決が難しい御相談がある可能性もありますので、基幹相談支援センターや自立支援協議会とも、今まで以上に連携を図っていきたいと考えております。
また、障害者差別解消法の改正に関しましては、市報やホームページ、リーフレットや通知など、障害のある方も含めて、市民の方や事業者への周知を検討しておりますので、あわせて、障害のある方への差別の解消や、障害のある方への合理的配慮が必要なことについての啓発も図ってまいりたいと考えております。
○宮野直樹君
障害は、生まれつきのものだけでなく、病気、事故、加齢などによって誰にでも起こり得るものです。障害のある人が暮らしやすいまちをつくることは、誰もが暮らしやすいまちをつくることになります。障害の有無にかかわらず、多様性を認める地域社会こそが豊かな地域社会であり、一人一人が異なることを前提に、お互いを大切にし、認め合い、尊重し、誰もが希望を持てる共生社会の実現に向けて、法改正やこの条例制定、これをチャンスと捉え、さらなる取組をお願いして、この質問を終わります。
それでは、次の質問にまいります。二つ目は、重度障害者の就労支援についてであります。私は、これまで相談支援専門員として障害のある方々の様々な思いを聞いてきました。仕事をすることに関して言えば、自分自身の生きがいとして働きたい、また、誰かの役に立てることは本当にうれしい、収入を得られることが喜びになるなど、働くことは障害者のみならず、人にとって人生の豊かさであり、大変重要な意味があります。しかし、重度の障害者が就労する場合、介助の問題により働くことが困難となる現状があります。
そこで今回は介助が必要な重度障害者の就労支援に焦点を当てて質問をさせていただきます。初めに、重度訪問介護について質問をいたします。現状の障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの中にある重度訪問介護について、その概要を御説明ください。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
重度訪問介護の概要についてお答えいたします。重度訪問介護は、障害者総合支援法に基づき、身体障害の等級が1級や2級など、重度の障害者が利用できる障害福祉サービスでございます。
サービスの具体的な内容は、常時介護が必要な重度の障害者を対象として、ヘルパーが障害のある方の御自宅を訪問し、排せつや入浴、食事などの日常生活の介護や外出したときの移動中の介護などの介護サービスを提供するものでございます。
○宮野直樹君
では通勤や就労中に、この重度訪問介護を利用することは可能でしょうか。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
重度訪問介護が通勤や就労中に利用することが可能かについてお答えいたします。国の基準では、就労など個人の経済活動などに関する支援は、障害者を雇用する事業主などが合理的配慮として行うべきとの考えから、通勤や営業活動などで外出することについては、重度訪問介護の支給対象にはなっておりません。また、就労中の排せつや食事の介護も、個人の経済活動などに関する支援に含まれるとの考えから、これも重度訪問介護の支給対象になっておりません。
○宮野直樹君
経済活動等については、事業者の合理的配慮でやってくださいと。あわせてこの重度訪問介護で、様々な介助に対応することはできないということが分かりました。
そこでお尋ねします。現状の障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの中で、重度障害者の通勤や就労中に介助が必要な障害者が利用できる制度はほかにあるのでしょうか。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
重度障害者が通勤や就労中に利用できる制度についてお答えいたします。障害のある方の移動を支援するサービスとしましては、重度訪問介護のほかに、重度の視覚障害者を対象とした同行援護や、自分の体やほかの人をたたいたり、物を壊すなど、周囲に影響のある行動があり、特別な支援が必要な強度行動障害者などを対象とした行動援護がございますが、いずれも重度訪問介護と同じように、通勤や就労中の介護は対象になっておりません。
なお、事業主が合理的配慮として行うという考え方により、障害者の法定雇用率を達成していない事業主が納める障害者雇用納付金を財源とする助成金を活用して、ヘルパーを配置することは可能でございます。
○宮野直樹君
現在の障害福祉サービスの中では、通勤や就業中に利用できる制度はないということは分かりました。通勤や就労中に介助が必要な方を支援できる仕組みについては、まだまだ不十分なところがあります。そのような中、国においては、障害者総合支援法の中にある地域生活支援事業の任意事業の中に、令和2年に重度障害者等に対する就労支援として、重度障害者等就労支援特別事業が盛り込まれています。
そこでお尋ねします。この重度障害者等就労支援特別事業の目的と内容について御説明をお願いいたします。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
重度障害者等就労支援特別事業の目的と内容についてお答えいたします。この事業は、雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業という名称で、障害者総合支援法に基づき、市町村が実施主体となり、地域の特性や利用者の状況に応じて柔軟に実施することができる地域生活支援事業の一つとして、令和2年10月に創設されたものでございます。
この事業の目的は、重度障害者の通勤や職場などにおける支援に意欲的に取り組もうとする企業や自治体を支援することでございます。
次に、事業の内容ですが、障害者の法定雇用率を達成していない事業主が納付金を納める障害者雇用納付金を財源としまして、通勤の援助者や職場での介助者を配置する費用を支給する助成金を活用しても重度障害者への支援が十分に図れない場合や、障害者雇用調整金などの対象にならない自営業者の場合に、必要な費用を支援するものでございます。
○宮野直樹君
目的としては働く意欲のある障害者の方々の就労の機会の拡大を支援していくということ。また、内容については、福祉サービスでは対象となっていない、通勤・職場での介助等を雇用施策と連携して行うということで御説明がありました。では次に、この事業の対象者は市内にどの程度いるのでしょうか。お願いします。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
重度障害者等就労支援特別事業の対象となる方が市内にどのくらいいるのか、具体的にどのような支援が受けられるのかについてお答えいたします。この事業の対象となる方は、障害福祉サービスにおける重度訪問介護、同行援護、行動援護を利用している方になります。
本市では、現在、重度訪問介護の利用者が22名、同行援護の利用者が61名で、行動援護の利用者はいらっしゃいません。具体的な支援の内容につきましては、通勤時における介助のほか、職場における喀たん吸引、姿勢の調整、安全確保のための見守りなどの支援と想定されます。
○宮野直樹君
重度訪問介護そして同行援護の利用者数が、今22名と61名で、合わせて83名というところで、全ての方が就労を希望するか分かりませんが、対象者は一定数いることが分かりました。支援内容についても、身体的な介助、喀たん吸引、必要な見守り等ということで、そういう内容が実施されるということが分かりました。
タブレットの写真を御覧ください。
  〔説明資料を議場内ディスプレイに提示〕
○宮野直樹君
この写真は脊髄性筋萎縮症という障害のある女性です。重度の身体障害があり、栄養の注入や人工呼吸器を使用しています。現在は、重度訪問介護のサービスを利用して生活をされています。例えば、彼女が働く意思、また力があっても、通勤、そして職場での身体介護、医療的なケアなど、重度訪問介護のサービスを職場等で受けることはできません。社会に受け入れる体制が整っていないことで、障害が生まれてしまいます。また、食事、トイレ、体位交換など、身体介護と併せて、こうした胃ろう――車椅子の後ろにあるボトル、これは胃ろうですね。胃ろうや人工呼吸器、こうした使用など、専門的な支援を要することから、一般企業に対応することは負担が重く、合理的配慮の提供は難しいことが考えられます。
そこで重度障害者等就労支援特別事業があれば、企業で働いている方、また自営業の方についても、国が定めた基準や上限の範囲内で、福祉サービスにより、通勤、職場での様々な支援が得られ、就労機会の拡大、働く思いの実現に寄与できます。
では、このサービスを提供できるのはどのような事業所でしょうか。また、本市における事業者の数についても併せてお示しください。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
重度障害者等就労支援特別事業において、サービスの提供が可能な事業者と事業所の数についてお答えいたします。サービスの提供が可能な事業者は、重度訪問介護、同行援護、行動援護の指定を受けている障害福祉サービス事業所になります。令和5年6月1日現在の本市におけるこれらの事業所数は、重度訪問介護事業所が45か所、同行援護事業所が21か所、行動援護事業所が5か所でございます。
○宮野直樹君
本市においては複数の事業所があるということで、制度化ができれば、それに対応できる基盤というのは一定程度整っているということが分かりました。次に全国の自治体及び山口県内の実施状況について御説明をお願いいたします。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
全国と山口県内の重度障害者等就労支援特別事業の実施状況についてお答えいたします。令和5年1月1日現在で、全国で50の市区町村が実施しております。また、山口県内では宇部市が実施しております。
○宮野直樹君
タブレットの資料のほうを御覧ください。
  〔説明資料を議場内ディスプレイに表示〕
○宮野直樹君
こちらは下関市障害福祉計画(第6期)のアンケートです。障害のある方の就労支援として、どのようなことが必要だと思いますかという項目に対して、既存の制度支援対象外である通勤手段の確保が18.8%、職場で介助や援助が受けられることが13.3%、合わせると32.1%の方が通勤や職場で介助など支援が必要と回答しています。こうした状況も含め、制度化を進めていただきたいと考えています。
そこでお尋ねします。本市の今後の事業実施に当たっての考え方について教えてください。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
今後の重度障害者等就労支援特別事業の実施についてお答えいたします。議員から御提案のありました重度障害者等就労支援特別事業につきましては、支援の専門性や費用負担の面から、会社などでの対応は難しい場合もあると考えられますので、市内のニーズの把握や他の自治体の実施状況などについて情報収集を行うとともに、今年度策定を行います第7期障害福祉計画などの中で検討してまいりたいと考えております。
○宮野直樹君
たとえ重度の障害があったとしても就労という形でも、希望を持てる社会の実現のため、ぜひ制度化の実施を要望してこの質問を終わります。
最後三つ目は、医療的ケア児のレスパイト支援について質問をします。人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、たんの吸引など医療的ケアが日常的に必要な子供たちである医療的ケア児は、全国で約2万人とされています。また、2022年10月、山口県における医療的ケア児の実態調査によると、山口県内では193名となっています。
そうした中で、本市における医療的ケア児の現状をお伺いしたいと思います。まず初めに、現在本市には医療的ケア児は何名いらっしゃるのでしょうか。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
本市の医療的ケア児の人数についてお答えいたします。令和4年7月に医療的ケア児に対する支援施策の検討に活用するため、山口県が実施した実施調査によりますと、下関市内の医療的ケア児は50名でございました。
○宮野直樹君
本市においては50名いらっしゃるということが分かりました。では、医療的ケア児に対する支援について、現在、本市ではどのような取組がされているのでしょうか。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
本市での医療的ケア児に対する支援の取組についてお答えいたします。本市におきましては、平成31年2月に、保健、医療、福祉、教育などの関係者17名で構成します下関市医療的ケア児支援地域連携会議を設置しまして、地域の課題や対応策についての意見交換や情報共有を行っております。
この会議には、福祉部に加えて、こども未来部、保健部、教育委員会といった関係部局も参加し、委員の方の御意見を伺いながら、保育所や小中学校などでの医療的ケア児の受入れ体制の整備などに取り組んでまいりました。
また、関係団体などからの要望を踏まえ、日常生活用具の給付種目に、令和4年度からは、人工呼吸器用非常用電源と、それから令和5年度からは、折り畳み式や空気式などの浴槽を追加いたしました。
なお、山口県の事業でございますが、令和4年4月に、社会福祉法人じねんじょに委託しまして、山口県西部医療的ケア児支援センターを設置し、医療的ケア児やその御家族に対する専門的かつ総合的なサポートを行っております。
○宮野直樹君
様々な支援を実施しているという状況でありますが、現在、医療的ケア児に対して安全で長期的な在宅介護をするため、主介護である家族、特に母親の負担軽減に関わるレスパイトケアを提供する短期入所の利用ができないという課題があります。
タブレットの資料を御覧ください。
  〔説明資料を議場内ディスプレイに表示〕
○宮野直樹君
これは山口県における医療的ケア児の実態調査において、希望があるが利用できないサービスについて、短期入所が36.2%と最も多い状況です。
そこでお尋ねします。医療的ケア児のレスパイトケアとして、本市に短期入所ができる事業所や施設はどれぐらいあるのでしょうか。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
医療的ケア児の御家族や介護者の休息を目的としましたレスパイトケアとして短期入所ができる事業所や施設についてお答えいたします。医療的ケア児に対応するためには、看護職員の配置が必要になりますが、日中の通所の事業所を除きまして、夜間に医療的ケア児をお預かりすることができる医療型短期入所事業所は、市内にはございません。
○宮野直樹君
夜間等に受け入れることは、ちょっと難しいという状況が分かりました。また本市においては昨年8月に、障害者児の家族が急病や冠婚葬祭への出席等の理由により、緊急で宿泊または日帰りの支援を行う、障害者(児)緊急一時支援事業が始まっていますが、この障害者児緊急一時支援事業において、医療的ケア児の受入れは可能でしょうか。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
障害者緊急一時支援事業において、医療的ケア児の受入れは可能かについてお答えいたします。障害者緊急一時支援事業につきましては、既存の障害福祉サービスの短期入所では、御家族の入院など緊急時の受入れが難しいという状況があり、本市独自の制度として、令和4年8月から開始したものでございます。この制度の創設に当たり、下関市自立支援協議会からは、既存の短期入所では、医療的ケア児も含めた障害児の受入れが難しい状況であるという御意見をいただいておりましたので、事業を受託していただく短期入所事業所には、障害児の受入れについてもお願いをしてまいりました。
しかしながら、令和5年6月1日現在で、障害者緊急一時支援事業は、9事業所に受託していただいておりますが、医療的ケア児につきましては、看護職員の配置の問題もあり、受入れができる事業所のほうはございません。
○宮野直樹君
医療的ケア児のレスパイトケア、また緊急時の支援についても、受入れは本市ではなかなか難しいという課題があります。
タブレットの資料を御覧ください。
  〔説明資料を議場内ディスプレイに表示〕
○宮野直樹君
こちらについては、山口県における医療的ケア児の実態調査の中で、この短期入所を利用できない理由という項目に対して、利用できる施設がない35.7%、施設が医療的ケア児に対応していない28.6%と回答しています。
こうした課題を解決するために、一つ制度の提案があります。医療的ケア児在宅レスパイト事業の制度化、これを進めるべきだと考えています。この事業は、在宅の医療的ケア児の看護や介護を行う家族の負担軽減を図るため、医療保険の適用を超える自宅利用や、医療保険の適用外となる自宅以外での訪問看護も提供できる制度です。この制度があることで、本人のことを理解して日頃から関わりのある訪問看護が、レスパイト支援を提供できることになります。また、自宅以外での場所で、医療的ケアが提供できることで、施設が医療的ケアに対応していないといった課題の解決や、医療的ケア児の社会参加の機会の拡大にも期待できるのではないでしょうか。医療的ケア児のレスパイト環境を整えるにはマンパワーや高度な専門性を求められることから、一つの機関で整えることは、簡単ではありません。様々な機関や多職種が連携をすることが不可欠です。
最後になりますが、時間の関係で、こうした医療的ケア児在宅レスパイト事業の導入について、本市の考え方をお願いいたします。
○福祉部長(冨本幸治郎君)
医療的ケア児在宅レスパイト事業の実施に当たっての考え方についてお答えいたします。医療的ケア児在宅レスパイト事業は、医療的ケア児の御家族のレスパイトとして、有効な対策の一つであると考えております。現在、下関市医療的ケア児支援地域連携会議の関係者の方々と、本市での実施が可能かどうか協議を行っておりまして、引き続き、そのほかの方法も含めて検討していきたいと考えております。
○宮野直樹君
医療的ケア児が健やかに成長し、親子を含め、家族全体が安心した日常生活、社会生活が送れるため、医療的ケア児の御家族、そして御本人にしっかり支援に取り組んでいただきますことを要望して、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
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