録画放映

第3回定例会
9月21日(木) 本会議(一般質問3日目)
市民連合
山下 隆夫 議員
1.市政運営における公正の確保と透明性の向上について
2.地域農業の振興と食料自給率向上対策について
【下関市議会 本会議確定版】

○議長(香川昌則君)
15番、山下隆夫議員。(拍手)
  〔山下隆夫君登壇〕
○山下隆夫君
市民連合の山下隆夫です。よろしくお願いいたします。初めに、市政運営における公正の確保と透明性の向上についてお伺いをいたします。
情報公開制度が、日本で初めて制定をされたのは、山形県の金山町で1982年のことです。その後、国が1999年に情報公開法を制定し、2001年4月に施行、2002年10月には、独立行政法人等情報公開法が施行され、以降、地方自治体による条例制定が加速をし、現在では、1町を除き、全ての自治体で制定をされています。本市では、2005年の1市4町の合併に伴い、それぞれの市町で制定されていた条例を整理し、同年、新たに下関市情報公開条例として施行されています。改めて公文書を情報公開する目的をお伺いいたします。
○総務部長(笹野修一君)
公文書を情報公開する目的ということで御質問いただきました。公文書公開制度の目的は、市の保有する情報の一層の公開を図り、市民の知る権利を保障するとともに、市政に関し、市民に説明する責務が果たせるようにし、もって市政に対する市民の理解及び信頼の確保、並びに市民の市政への参加及び公正で透明性の高い市政の推進に資するということでございまして、これは下関市情報公開条例第1条におきまして規定されているところでございます。
○山下隆夫君
今答弁いただきました、市の保有する情報の一層の公開を図り、市民の知る権利を保障するとともに、市政に関し市民に説明する責務が果たされるようにし、もって市政に対する市民の理解及び信頼の確保、並びに市民の市政への参加及び公正で透明性の高い市政を推進をするということが目的ということでございますけども、この条例の目的を達成するために必要なことは何とお考えでしょうか、お伺いします。
○総務部長(笹野修一君)
市政を行う上では常に、市政に関し市民に説明する責務が果たせるようにするという認識の下、職員一人一人が事務を行うことが必要と考えております。
○山下隆夫君
それも一つの考えでしょうけれども、公文書公開の目的を達成するためには、まずは公文書が適切に作成をされ、適切に管理されている、これが最低限の条件だと私は思います。これについては、後ほど触れます。
その前に、公文書の定義について1点確認しておきたいと思います。情報公開条例第2条で、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図面、写真、フィルム及び電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものをいう」と、公文書の定義がされています。当該実施機関の職員が組織的に用いるものの解釈として、実施機関の職員が職務上作成した個人メモ等を複数の職員で共有した場合は、情報公開の対象になる、このように理解をしてよろしいでしょうか。
○総務部長(笹野修一君)
下関市情報公開条例におきまして、公文書の定義は、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図面、写真、フィルム及び電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」とされております。こちらは、議員御案内のとおりでございます。
組織的に用いているかの判断は、一律に行うのではなく、具体的には、作成・取得、利用、保存、廃棄の実態を踏まえまして、個別に行う必要がございます。すなわち、まず1つ目でございますが、職員個人の意思で自己の職務上の便宜のために作成または取得したか、上司の指示の下に作成または取得したか、2点目といたしまして、他の職員に配布され、利用に供されたか、3点目としまして、作成または取得した職員個人の判断で廃棄し得るか、組織として供用されるファイルに保存されているかなどを考慮して判断することとなります。
御質問の場合につきましては、例えばその個人メモの写しを他の職員に配布して、報告に代えた場合などは、公文書として公開の対象になると考えております。一方、個人メモを基に他の職員に口頭で報告とした場合などは、当該個人メモは公文書とはみなされず、公文書公開の対象にはならないと考えております。
○山下隆夫君
後半の部分ですけども、それに関して東京都が巨額の投資をした、いわゆる臨海副都心の開発に関する開示請求に対して、対象文書が何もないということに対する不服申立てが行われた事案では、情報公開審査会が、自分たちが個人的メモと思うものも含めて、関連文書を全部審査会に提出するように、実施機関に指示して、その利用について質問を行い、組織として供用していると解さざるを得ないものがあるという答申を出している、こういった事例があるわけであります。そういった意味では、後半の部分、認識を改めていただきたいと思います。
市のホームページに情報公開制度とは、市が保有している文書等を必要とするときに、請求に応じて公開するものです。これは、市が仕事をする上で、作成・取得した様々な文書等を見ることにより、1人でも多くの市民が市政に関心を持ち、また、市が市民への説明責任を果たし、市民参加によるまちづくりや、透明性の高い市政を推進しようとするものですと、情報公開制度の趣旨を掲載しています。改めて全ての行政機関の職員に、このことを徹底していただきたいということを要望しておきたいと思います。
次に、公文書管理の現状と、あるべき姿についてお伺いをいたします。情報開示請求をしても、文書がない、見当たらない、つくっていないということでは、情報公開制度そのものが機能しないことになります。長府苑の取得に関する公文書の存在が、6月議会で議論の的となりました。その後、総務委員会に一部資料が示されましたけれども、その範疇では、長府苑取得のための経費を予算化する際の意思決定過程の協議録はありませんでした。どのような議論を誰が行ったのか、状況分析や現状分析は適切だったのかを、公文書によって理解し、その判断が適切だったのか、適切ではなかったのかを市民が判断する手段は、意思決定に至る過程における協議録等の公文書であります。ゆえに、情報公開制度と公文書管理制度は、車の両輪と言われているわけであります。本市では、公文書の作成基準や管理基準を定めておられるのでしょうか、お伺いいたします。
○総務部長(笹野修一君)
本市におきましては、下関市文書取扱規程におきまして、文書の適正な取扱いについて定め、文書事務の適切な処理、整理及び保管、並びに文書の内容、性質に応じた適正な保存を行っているところでございます。下関市文書取扱規程は訓令でございまして、市長部局を対象とするものではございますが、他の実施機関におきましても、保存期間等、実施機関の実情に応じて、変更しているものを除き、市長部局の規定と同様に対応しております。
○山下隆夫君
それは、作成すべき公文書及び保存管理方法が具体的に明確になっているのか、市の各機関で統一された基準となっているのか、情報公開条例の趣旨、目的を達成することが可能な基準となっているとお考えなのか、その辺りをお伺いいたします。
○総務部長(笹野修一君)
下関市文書取扱規程は、起案する際の記載事項など、文書の取扱いについて定めているものでございまして、文書の作成をする際の基準を定めているものではございませんが、下関市事務決裁規程――こちらは別の規定になりますが、こちらによりまして事務に関する意思の決定である決裁、こちらは原則として、回議書により受けなければならないとしております。そのため、法令等の定めや事務の内容に応じまして、下関市文書取扱規程により、回議書を作成するものであると考えております。
そのほかに、電話または口頭による照会、回答、報告等で重要なものについては、文書を作成しなければならない旨も規定をしております。また保存期間につきましては、11年以上、10年等の保存期間の区分に応じた文書の種別を規定し、文書の保存期間を明確にしているところでございます。
次に、これらの基準が市で統一されているかにつきましては、市長部局では、下関市文書取扱規程及び下関市事務決裁規程を訓令で定めておりまして、他の執行機関におきましても保存期間等、実施機関の実情に応じて一部変更している部分はございますが、市長部局の規程と同様に対応しているところでございます。
次に、これらにより、情報公開条例の目的を達成することが可能かどうかにつきましては、法令等の定めや事務の内容に応じまして、回議書を作成し、決裁を受けるものであること、文書の保存期間等の規定により、これら文書を適切に保管しているものであることから、公開請求に基づき、文書を公開することが可能となり、市民に説明する責務は、十分に果たせているものと考えております。
○山下隆夫君
よく分かりました。十分に市民への説明責任を果たせるものと考えているということでございますけれども、この規程を読ませていただきましたけれども、私はそうはなっていないと思います。単に公文書の作成の様式とか、保存期間を定めている規程であって、情報公開条例の趣旨、目的を達成することを目的として作成されたものではないと私は思っています。
ただ、その規程すら守られていないのが、長府苑取得の意思決定に至る過程であります。今部長から答弁いただきましたように、文書取扱規程の第27条に、電話または口頭による照会、回答、報告等で重要なものについては、文書を作成しなければならないと、ある意味では唯一具体的に規定をされているわけでありますけれども、実際には文書が作成されていないというのが現実であります。
こうしたことを防ぐため、山口県は、本年3月14日に山口県公文書等管理条例を制定し、令和6年4月1日から施行することになっています。条例制定に当たり、山口県は、森友・加計問題、南スーダンPKO日報問題等の国の公文書管理をめぐる事案や、公文書管理法において、地方公共団体は、文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、これを実施するよう努めなければならないと規定されていること、また、県の公文書管理制度には統一規範がないこと、県における意思決定に至る経緯・過程や県の事務・事業の実績を合理的に後付け、検証することができるよう、文書の作成について条例で規定することが適当であると、このように整理をしています。
本市におきましても、公正で透明性の高い市政を推進するため、公文書管理条例を制定すべきと思いますけども、どのようにお考えでしょうか。
○総務部長(笹野修一君)
先ほど答弁させていただきましたが、本市では条例という形式で文書管理のルールを定めてはおりませんけれども、文書取扱規程によりまして公文書の適正な管理を行うとしているところでございます。
公文書の適正な管理は、市民が市政の情報を取得する上におきまして、また現在及び将来の市民に説明責任を果たすためにも、必要かつ重要なものであると考えております。そのため、引き続き、文書取扱規程等に基づき、公文書の適正な管理に努めるとともに、議員御案内の公文書の管理に関する条例、こちらの制定につきまして、他の自治体の状況も踏まえつつ検討してまいりたいと考えております。
○山下隆夫君
他の自治体等の状況を見極めながら考えたいということでございましたけども、条例の必要性についてはどのような認識を持っておられますか。
○総務部長(笹野修一君)
条例の必要性ということで御質問をいただきました。今、規程で定めております。こちらは訓令ということになるわけですけども、内部の事務のルールを定めるということで、訓令ということで、法規の性質を持っているわけなのですけども、特にその住民に対して規制を対象とするものではありませんので、内部のルールという規範ということで、基本的には訓令で足りるものとは理解しておりますけど、確かに議員御案内のとおり、条例により広く公布するということで、その辺の当然優位性はあろうかと思いますので、そこは先ほどの答弁の繰り返しにはなりますが、他の自治体の状況も踏まえて検討していきたいと考えております。
○山下隆夫君
制定をする優位性はあるということでございますので、そういった意味では、早急に調査・研究をしていただきたい。それを始めていただきたいと思います。
次に、予算編成過程の情報公開と市民参加についてお伺いをいたします。全国オンブズマン連絡会議は、「情報公開は住民参加の前提条件ですが、より積極的な参加を進めるためには、予算編成過程の情報公開と住民参加制度が重要です」として、予算編成過程の透明度を調査し、ランキングをしています。
調査に当たり、全国オンブズマン連絡会議は、法律で公表することが義務づけられている予算書や予算説明書を見ただけで、税金の無駄遣いがあるとか、こちらの政策は後回しにして、こちらの政策に資金を投入すべきだといった意見を私たち市民が持つことが、実際どのくらい可能だろうかという観点から、その年度の予算案をつくる、言わば動機となる事実や、何を財源として政策を実行するのか、自治体執行部でどのような意見が予算案をつくるまでになされたかということなど、予算編成のプロセスが明らかになることが、市民が予算案を理解し、これに意見を持つことが可能となると言っています。
主な調査項目としては、予算要求内容の公開がされているか、予算要求情報をいつ公開しているか、予算査定情報の公開がされているか、査定情報をいつ公開しているか、予算案に対して市民参加の制度を設けているか、であります。本市における予算編成過程の情報公開の現状と今後の方向性、お考えをお伺いいたします。
○財政部長(塚本滉己君)
まず予算編成過程の情報公開につきましては、予算要求と査定状況につきまして、新規・拡充、廃止・縮小について整理したものを、当初予算案の公表後、ホームページにおきまして、予算要求と査定状況として公表しております。引き続き、予算要求と査定状況を公表してまいりたいと考えております。
○山下隆夫君
今、部長がお答えいただきましたように、一般会計と特別会計の新規・拡充事業と廃止事業のみの公表となっています。もっと拡充すべき事業があるのでは、またこれは廃止してもいい事業ではないか、いや廃止すべきではない、などについて、現在の公開方法では、予算の全体像を把握することができません。また、新たに取得する土地・建物等の財産について、その必要性などについても公表をされていません。
市政に対する市民の理解及び信頼の確保と市政への参加を促し、公正で透明性の高い市政を推進するという目的を達成するためには不十分です。全ての事業を公表するとともに、現在は当初予算のみの公表となっていますけれども、補正予算についても公表すべきと考えますけども、いかがお考えでしょうか。
○財政部長(塚本滉己君)
先ほども答弁いたしましたとおり、予算編成過程の情報公開につきましては、市民の皆様に影響が大きい、新規・拡充、廃止・縮小について整理したものを公表しております。
全ての事業につきまして、予算編成過程を公表することにつきましては、現在の本市の予算編成作業の工程を考えますと、時間的な制約があり、困難であると考えております。
また、補正予算につきましては、当初予算からの新たな財政需要に対して、追加の予算を計上するものでございますけれども、補正予算案の概要や政策予算説明資料におきまして、各事業の内容を詳細に公表しているため、重ねて予算要求と査定状況の公開を行うことは考えておりません。
○山下隆夫君
できない理由をおっしゃいましたけども、それはあくまでも自分たちの都合であって、市民目線で考えたことではないということは指摘をさせていただきたいと思います。
私は議員当選以来、予算編成過程の情報公開と市民参加を求めてまいりました。中尾元市長の時代に、予算の査定状況という形で、予算編成後に公開をするようになりました。また、前田市長になってからは、予算化をしなかった新規事業についても公表するようになりました。これについては、財政部の努力、市長の努力を評価しているところでございます。
しかし、市民意見を反映するという点では実現をしていません。全国オンブズマン連絡会議のランキングにおいて、政令市で第1位の名古屋市の「予算編成の透明化の確保と市民意見の予算への反映に関する条例」の第1条に、「この条例は、本市の予算が市民生活に与える影響が多大であることに鑑み、予算の編成過程における情報を広く公開することにより、予算編成の透明性を高め、市民の声をより予算に反映できるようにすることを目的とする」と規定されています。名古屋市に視察に行った際、予算編成過程を公表し、市民意見を聞くことは我々の義務である、そういった旨のことを、市の職員がおっしゃっていた、これはとても印象的なことでした。
全国オンブズマン連絡会議が、情報公開は住民参加の前提条件ですが、より積極的な参加を進めるには予算編成過程の情報公開と住民参加制度が重要ですと述べているように、予算編成過程の情報公開の充実と併せ、予算編成の透明性を高め、市民の声をより予算に反映するために、予算案に対する市民参加の制度を設けるべきと思いますけれども、改めてお伺いいたします。
○財政部長(塚本滉己君)
まず前提といたしまして、予算編成に当たりましては、各部局におきまして、市民の皆様との密接な関わりの中で、様々な要望を聞いており、それらを反映するよう努めております。その上で、議員御案内のありましたような予算編成過程を、現在の公表時期より早め、市民意見を求め、それを反映させることにつきましては、本市の予算規模や財源状況、組織体制、編成スケジュール等を総合的に勘案すると困難であると考えております。
○山下隆夫君
これまでの答弁と同じ答弁でございましたけれども、先ほども申しましたけれども、あくまでも自分たちの都合であって、市民目線に立って考えるならば、その考え方も変わってくると思いますので、市民目線に立った考え方で再度検討していっていただきたいと思います。
1993年に制定をされた行政手続法の第1条で、「この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする」と規定されています。その透明性とは、行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいうと定義をされています。情報公開の目的を達成するためには、公文書が適切に作成され、適切に管理されていることが必要です。市政運営における、公正の確保と透明性の向上を図るため、公文書管理条例の制定と予算編成過程の情報公開の充実、市民参加の仕組みを整えることを改めて申し上げて、このテーマの質問を終わります。
次に、地域農業の振興と食料自給率向上対策についてお伺いいたします。農林水産省は、本年8月7日に、令和4年度の食料自給率を発表しました。国内の食料供給に対する食料の国内生産の割合を示す指標である食料自給率は、カロリーベースで38%、生産額ベースで58%となっています。カロリーベース、生産額ベースとも過去最低となっています。種子や肥料の海外依存度を考えれば、実質的には10%にも届かないのではと指摘している専門家もいます。衣食住は生活の三大要素でありますけれども、その一つである食が危機に瀕していることから、国は、食料・農業・農村基本計画で、食料自給率の目標を45%に設定をしています。しかし、目標設定以降、下がり続けているのが現状であります。本市の食料自給率と自給率を高める観点からの取組をお伺いいたします。
○農林水産振興部長(植木純治君)
食料自給率と自給率を高める取組についてお答えいたします。農林水産省が公表している山口県の食料自給率は、令和3年度の概算値では、カロリーベースで31%、生産額ベースで43%でございます。食料の安定的な供給につきましては、農業生産の増大を図ることを基本として取り組んでおりますが、その一端を担う農業者の減少と、それに伴う経営耕地面積の減少につきましては、本市としましても大変危惧しているところでございます。
このため本市では、総農家数が減少する中で、農作業の省力化・効率化を進めるため、スマート農機の導入を支援するスマート農業実践加速化事業を実施し、農地の利用促進に取り組んでいるところでございます。
○山下隆夫君
今、御答弁いただきましたように、農林水産省が公表している山口県の食料自給率、令和3年度の概算値で、カロリーベースで31%、生産額ベースで43%となっておりまして、カロリーベース、生産額ベースとも全国平均を下回っているのが現状であります。今後は、農業振興を農家だけへの支援と捉えるのではなく、市民生活を守るための手段でもあるという、こういった位置づけで取り組んでいっていただきたいと思います。
食料自給率を高めるためには、それを担う生産者がいることが大前提となります。2020年の農林業センサスによりますと、山口県の農林業従事者の平均年齢は72.3歳で、全国一高齢となっています。平均が72.3歳なので、それよりも高齢の方もいるということになります。今後、後継者不足を理由に、離農する農家が増える可能性は非常に高く、実際、農業は自分の代で終わりという声が多々あります。
先月、農協の下関統括本部の理事の皆さんと意見交換をする機会がありました。その中で、肥料、飼料高騰対策を講じていただいておりますけれども、農業従事者が高齢化をしている中で、申請手続きに苦慮しているのが実態だというお話がありました。もはや、数年、数十年で駄目になるかもというのが実態ではないでしょうか。担い手確保のための本市の取組の現状と課題、今後の方向性について、改めてお伺いいたします。
○農林水産振興部長(植木純治君)
食料自給率を高めるための担い手確保の取組の現状と今後の方向性についてお答えいたします。農家数の減少に対しましては、新たな農業の担い手の確保・育成を図るため、本市独自の農業体験事業である、あぐりチャレンジ推進事業をはじめ、首都圏等における就農相談会への参加や、新規就農者が営農を開始する際に必要となる施設や機械器具等の導入支援を行い、JA、県とも連携し、就農相談から就農定着までの一貫した支援を行っております。今後もこうした取組を通じて、新たな担い手の確保・定着を積極的に支援してまいります。
○山下隆夫君
農業従事者が高齢化しているのは、若い人にとって、農業に将来性と魅力を感じることができないからだと思います。ネックとなっているのが、不安定な収入という、大きなデメリットであります。裏を返せば、若者が安心して、農業で生計が維持できる環境を整備すれば、担い手が確保できるということになると思います。
また先ほど御答弁の中にありましたけども、新規就農するに当たり、農業用の機械等を購入しなくてはなりません。令和3年度の新規就農者の就農実態に関する調査結果によりますと、新規参入者の初期費用は、全体平均で755万円と、多額の経費が必要ということが明らかになっています。新規就農後に必要な機械・施設等の導入に対する支援策については、先ほど答弁がありましたように実施をされていますけれども、それでも一定の費用は必要となります。これも新規就農に当たってのデメリットの一つではないでしょうか。新規就農者へのさらなる支援の充実を図る必要があると思いますけども、いかがお考えでしょうか。
○農林水産振興部長(植木純治君)
新規就農者へのさらなる支援策の充実についてお答えいたします。これまで新規就農者が営農を開始する際に必要となる施設や機械器具等の導入支援をするとともに、国や県の事業である農業経営開始直後の経営の安定を支援する資金の支給や、農業法人等における新規就業者の技術習得等を支援する給付金の支給などを実施してまいりました。
また、農村地域においては人口減少が著しいという課題を抱えており、令和5年度から、本市独自の新たな取組といたしまして、遊休農地等を活用し、移住就農者を受け入れ、農業人材を育成し、独立させる農業法人等に対して、効率的な生産活動に必要な事務所の開設支援を行うとともに、その法人に就業した移住就農者に対して、住宅改修や家賃への支援をする、新たな農業経営者等育成実践モデル事業を実施しております。
今後もこうした取組を通じて、担い手の確保を図るとともに、新規就農者に対する相談から定着まで一貫した支援制度の充実を図ってまいります。
○山下隆夫君
様々な取組をされているけれども、なかなか実態として、抜本的な解決までには至っていないということでございます。そういった意味では、さらなる支援策を充実させていただきたいと思います。
担い手確保に関しましてもう一点、これもJA下関統括本部の理事の皆さんたちとの意見交換会で出た話でありますけれども、農家の家族が脱サラをして農家を継ごうとした際の支援制度がない。何らかの支援制度があってもいいのではという指摘を受けました。実家が農家だからといって簡単に担い手になれるわけではありません。何らかの支援制度があるのでしょうか。なければ、何らかの支援制度の創設を検討するお考えはございませんか。
○農林水産振興部長(植木純治君)
実家が農家の場合の就農支援策についてお答えいたします。現在、国の支援事業が2つあります。一つは実家の経営を継承し、さらに、法人化、機械化など、経営発展に向けた取組を行う場合、後継者の支援がございます。それからもう一つは、例えば、実家が米の生産のみの場合、新たに野菜栽培を始めるというような場合には、新規参入者と同等の経営リスクを負って経営を開始する農業者に対する農業経営開始直後の経営安定を支援する資金の支給を行っております。担い手の確保は喫緊の課題であり、今後施策の必要性も含め、検討してまいりたいと考えております。
○山下隆夫君
昨日も一昨日もありましたけども、現場ではそういった制度があることを十分理解していないし、浸透していないということがあるわけです。また、国の支援制度がありますけれども、それを受けるにはちょっとハードルが高いという側面もありますので、制度の周知と、また先ほど、検討したいということでございますので、しっかりと市としても御検討していっていただきたいということを申し上げておきます。
次に、地産地消・有機農業の推進についてお伺いをいたします。新規就農のデメリットの一つである初期費用に関しては、支援制度を充実させることで、デメリットを最小限に抑えることが可能でありますけれども、不安定な収入に関しては、消費者を含めた取組を講じることが重要となります。
全国農業協同組合中央会の山野徹新会長は、就任の記者会見において、我が国の食料自給率が、先進国の中でも最低水準にある中、近年では、気候変動や世界的な人口増加などで、食料をいつまでも安価に輸入できる状況は続かないのは明白だと述べ、食料安全保障の確立を訴えられました。そして、食料安全保障の確立には、生産から消費まで、各段階における関係者の理解醸成が不可欠であるとおっしゃっています。
これに関しまして、東京大学大学院教授の鈴木宣弘さんは、「地産地消は地域農業を守ることにつながる、消費者も農家の産直や農協の直売所のようなところで、数十円高くても、地元の安心・安全な食品を買うなど、一人一人の行動も鍵となる」とこのように述べておられます。地産地消の推進につきましては、これまでも様々な取組をされておりますけれども、食料安全保障の確立の観点から、さらなる取組の充実が求められています。地産地消推進の本市の取組の現状と課題、今後の方向性をお伺いいたします。
○農林水産振興部長(植木純治君)
地産地消の推進の本市の取組の現状と課題、今後の方向性についてお答えいたします。地産地消に向け、関係機関が一体となりまして、下関地域「地産・地消」推進協議会に参画し、地元農林水産物の需要拡大に向けた地域の取組を行っております。
具体的には、やまぐち食彩店や販売協力専門店といった地産地消推進拠点の拡大や、販売協力店での農産品即売活動及びYouTubeなどのデジタルコンテンツの配信を実施しております。また今年度、学校給食用食材実証業務を実施しております豊田農業公園みのりの丘に、学校給食用の野菜の実証圃場を設置し、JA山口県や県農林事務所と協力し、栽培面での課題及び収穫後の集荷・運搬など、学校給食への提供面での課題を整理・検証し、学校給食用食材の安定的な供給体制づくりに向けて検討を進めております。
また一方、消費者の方々に積極的に下関市産農林水産物を選んでいただきますようにしていくことも必要がありますことから、令和3年度から、農林水産事業者の新たな販路開拓支援事業を実施しております。これは、生産者応援サイト「しもマル.net」での情報発信や、「しもマルのマルシェ」の開催により、下関産農林水産物の魅力を積極的にPRするとともに、フェイスブックグループを活用し、生産者と消費者とのコミュニティーの活性化を図るものでございます。
市といたしましては、これらの取組により、農林水産業の生産現場の努力や創意工夫が伝わるように、また、市内産のものを買いたいという方のニーズに応えていけるように、生産者と消費者の結びつきを深めていくこととし、引き続き施策を講じてまいります。
○山下隆夫君
引き続き、推進をしていっていただきたいと思います。地産地消を推進していくために、学校給食の食材の地産地消率を高めること、これも重要なポイントになると思います。JA下関統括本部では、新たな出荷先として、学校給食を位置づけ、各営農センターへランチ倶楽部協議会を立ち上げ、取り組んでいるとお伺いをいたしました。地産地消、地域農業の振興へとつながることを大いに期待をしているところでございます。
これに関しまして、7月3日に、学校給食を通じた地産地消の推進に取り組んでおられる今治市に経済委員会で視察にまいりました。今治市では、今治産特別米と地域産米との差額及び精米に係る経費の差額を補助しています。また、豆腐製造に対して、今治産大豆と外国産大豆の現状差額相当を、今治産小麦を使ったパンと外国産小麦を使ったパンとの差額相当額を、今治で捕獲された猪肉を使用する際の豚肉との差額相当額を、今治市産農林畜産物及びその加工品を学校給食に使用する際の、従来の市外産との差額相当額を、それぞれ補助をしています。今治産特別米と地域産米との差額補助以外は、農林水産課が主管課として予算を確保しています。本市におきましても、農林水産振興部が主体となって、今治市のような取組をすべきだと考えますけども、いかがお考えでしょうか。
○農林水産振興部長(植木純治君)
差額補助についてお答えいたします。農林水産振興部としましては、JA山口県下関統括本部などの関係機関と連携しながら、学校給食食材の安定的な供給体制の構築に向けて、生産者の確保育成や、農業機械の導入に係る経費への補助など、引き続き、生産の面から支援してまいります。その結果、1品目でも多く、下関産農産物を供給できるよう、体制整備に取り組んでまいります。まずは下関産農産物の量の確保、これに取り組んでまいります。議員御提案いただきました事項につきましては、今後研究してまいりたいと考えております。
○山下隆夫君
担い手を確保する、それから、安定した収入を確保するという面におきましては、先ほどまで答弁がありますけども、様々な取組をされているけれども、実態としてなかなか成果が上がっていない。そういったことも含めて、今治市のような取組を、教育委員会も一生懸命頑張っておりますけども、教育委員会を応援する意味で、やはり農林水産振興部として、こういった事例を研究して、取り入れられるように、主体性を持って取り組んでいっていただきたいと思います。
新規就農者の確保対策として、地産地消の推進に加えまして、有機農業の推進が挙げられます。と申しますのは、今治市での視察の際、有機農業に積極的に取り組んでいるのは、新規就農者であると。それも移住者の方々だとおっしゃられました。「有機農業はこうして広がった」という著書の中で、秋田県立大学教授の谷口吉光さんは、農村への移住希望者には、有機農業に関心がある人が多いということは、様々な調査で指摘されていると述べるとともに、茨城県石岡市八郷地区のJA八郷が有機栽培部会を設立して、新規就農者の研修制度を実施している事例や、石川県羽咋市では、市とJA羽咋が連携をして、羽咋式自然栽培の地域ブランド化を通じて、新規就農者の増加、耕作放棄地や空き家の再生、地域コミュニティーの活性化につなげるモデルづくりを実施している事例を紹介しています。
有機農業の推進は、新規就農者の確保と移住促進ということだけではなく、農業政策はもちろんのこと、産業政策、観光政策、教育政策、子育て政策、健康医療政策、環境政策などの幅広い政策とつなぐことが可能だと考えています。本市でもこれから本格的に有機農業の推進に取り組むと思っていますけども、いかがお考えでしょうか。
○農林水産振興部長(植木純治君)
有機農業の推進につきましてお答えいたします。有機農産物の生産につきましては、新規就農者や移住就農者からの声も届いており、将来的には需要の拡大が見込まれる分野であると考えております。
農林水産振興部といたしましては、化学肥料や農薬を使用しないことにより、収量・品質が不安定であるといった課題がございますが、生産コスト削減や安定生産に資する有機農業に関する技術開発の状況を注視するとともに、国の状況を踏まえまして、生産者や県、JA等の関係機関と連携を図ってまいります。これを契機として、市としての幅広い政策につなげていけるよう関係部署と連携し、有機農業の推進に向けた取組について検討いたします。
○山下隆夫君
増田寛也元総務大臣らが発表した増田レポートで、岐阜県の白川町は、岐阜県第1位の消滅可能都市とされております。高齢化率46.8%ということで自然減が多くなり、人口は減少するばかりであったそうでありますけども、有機農業を目指して移住してくる人が多かったことから、脚光を浴び、一部の集落では、移住希望者がいても家が足りない状況になっているそうでございます。
その他、有機農業の推進により、若い後継者が増加した山形県高畠町の事例などが、「有機農業はこうして広がった」という著書の中で紹介されておりますので、一応読まれてみる価値があるのではないかと思いますので御紹介をしておきます。
次に、効果的な有害鳥獣対策の推進についてお伺いいたします。農家には不安定な収入に加え、有害鳥獣による被害という問題があります。これもJA統括本部の理事の皆さんとの意見交換会で出た意見でありますけれども、現状の有害鳥獣対策は、いたちごっこの状況であると。また、有害鳥獣による被害は、農産物だけでなく、自動車との衝突が年間75件、直近3か月でも25件発生しているということが、現場の声として挙げられました。
本市の有害鳥獣対策の現状と課題、今後の方向性を伺う予定でございましたけども、時間がないので、ここはちょっと飛ばさせていただきまして、農林水産省の野生鳥獣被害防止マニュアルの総合対策編の中に、1、侵入防止、2、生息環境の整備、3、被害軽減のための捕獲と個体群管理が、有害鳥獣対策の3つの柱として記載をされています。3つの柱の1点目、侵入防止柵の設置については、有害鳥獣対策は待ったなしの状況にあるにもかかわらず、電気柵の設置を要望しても、2年待ちの状況であるという声を私も伺いました。
これについては、先日の一般質問に対し、農林水産振興部として予算の確保に努めるという答弁がございましたので、農家が就農意欲を失わないように、農家にしっかりと寄り添って対応していただきたいと思います。
有害鳥獣対策の3本柱の2点目、生息環境の整備でありますけれども、餌資源や潜み場の状況を改善することで、防護や捕獲の対策も、効果を発揮するというものであります。
これに関しまして、9月1日の新聞に、豊北町田耕の朝生地区で、耕作放棄地に牛を放して除草する山口型放牧が載っていました。イノシシや鹿の通る道や隠れ場所をなくし、集落に近づくのを防ぐ取組であります。こうした取組を、私も評価すべきだと思いますし、市単独の事業としても取り組むべきと考えますけども、いかがお考えでしょうか。
○農林水産振興部長(植木純治君)
耕作放棄地に牛を放牧して除草する取組についてお答えいたします。山口型放牧は、県で実施している事業であり、和牛を電気柵で囲んだ水田や耕作放棄地に放牧するというものでございますが、主に地域ぐるみ鳥獣被害防止対策の一環として行われております。
この地域ぐるみ鳥獣被害防止対策は、手を挙げた特定の地域におきまして、その地域の地元の団体と山口県及び市が協力して、3年の期間で、隣地境界等の草刈り、防護柵の整備、わなの設置、講習会の実施などを行うものでございます。
耕作地に牛を放牧するには、牛の逃走を防ぐ電気柵や、飲み水の施設、及び日除けの設置など、周辺地域との協議、協力などが必要なこともあり、地元住民の方々と市が、県とも連携しながら、地域ぐるみ鳥獣被害防止対策の形で、実施していく必要があると思われます。
今後とも、地元や県との連携を取りながら、総合的な鳥獣被害の防止、軽減を推進してまいりたいと考えております。今後はこの事業を実施しながら、市で対応できるか検討してまいります。
○山下隆夫君
よろしくお願いいたします。3本柱の3点目の被害軽減のための捕獲と個体群管理についてでありますけれども、6月7日の経済委員会で、令和4年度の有害鳥獣捕獲数及び被害額の状況が報告をされましたけれども、捕獲数と被害額に相関関係が見られませんでした。
加害個体は集落周辺や、集落内を中心に生息している可能性が高いわけでありますけども、捕獲をしている野生鳥獣は山間部に生息している個体が中心で、加害個体ではないという可能性があるのではないかと思います。農作物のおいしさを知った加害個体を捕獲しなければ、効果的な有害鳥獣対策にはなり得ません。捕獲方法の検証を行い、加害個体を適切に捕獲できる体制、これをつくるべきだと思いますけども、いかがお考えでしょうか。
○農林水産振興部長(植木純治君)
加害個体の捕獲についてお答えいたします。現在、有害鳥獣の捕獲につきましては、市内の猟友会の方々が、定期的に山間部において猟を実施されております。個体数の減少に大変寄与されております。また、有害鳥獣は必ずしも特定の場所ではなく、餌を求めて広い範囲に移動しているものも存在すると思われます。偶然、農作物がある田や畑に出没した場合、銃を使用できない住宅の近傍のため、猟友会の方々にわなを設置していただきますが、捕獲することが容易ではございません。このようなことから、従来の個体数を減少させる猟友会の方々による猟を、引き続き実施いただくとともに、議員御指摘のような集落に近いエリアで被害が生じた場合の対応も今後検討してまいります。
○山下隆夫君
時間がないので、ちょっと早口になりますけども、最後に持続的な農業振興を図るための計画策定について伺います。食料・農業・農村基本法に基づき策定をされている食料・農業・農村基本計画の中で、現場主義に立ち、現場の課題やニーズ等を積極的に把握しながら、地域の実態に即した施策の展開を図ることが示されています。
また課題の解決に当たっては、消費者、生産者、事業者が協力・協働する関係を構築することにより、農業・農村の有する価値と役割に対する国民の理解と支持を得ることが何より重要であると示されています。
これらを的確に実施をしていくためには、地域の実態に即した持続可能な農業振興策を展開するための基本理念や基本方針を定め、計画的に推進する体制づくりが必要だと思います。持続可能な農業振興を図るために、農業振興計画等を作成すべきではございませんか。
○農林水産振興部長(植木純治君)
計画策定についてお答えいたします。農業振興を図るために目標を掲げることは大変重要なことであると認識しております。農業振興につきましても、第2次下関市総合計画が基本となっております。それを踏まえて、下関市、山口県、下関農林事務所、JA山口県下関統括本部などの関係機関で構成する協議会で、下関市地域農林業振興計画を令和5年5月に策定しております。
したがいまして、この第2次下関市総合計画や下関市地域農林業振興計画に掲げる目標の達成に向け、関係機関と協力し、本市農業の振興を図ってまいります。
○山下隆夫君
時間がございませんので、これで終わりますけれども、農業振興計画、この策定については、再度、検討していただきたいと思います。以上で終わります。(拍手)
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